Wings Over Shellharbour 2026, NSW Australia
- 6月21日
- 読了時間: 5分
魅力満載のAir Show: Down Underでの体験
ニューサウスウェールズ州南部、シドニーから南へおよそ100km。イラワラ断層沿いに広がる壮大な海岸線を背景に開催された「ウィングス・オーバー・シェルハーバー」は、オーストラリアでも屈指のロケーションを誇る航空イベントとして大きな注目を集めた。 5月16日から17日にかけて開催された本エアショーには、オーストラリア各地から約22,000人もの航空機ファンが来場し、会場は終日熱気に包まれた。
シェルハーバー空港を舞台に開催されたこの航空ショーの最大の見どころの一つは、戦後初期のジェット戦闘機から現代の高性能アクロバット機まで、多彩な機体が一堂に会した点が大きな特徴である。会場ではP-40キティホーク、F4Uコルセア,P-51ムスタング,スピットファイアといった日本でも馴染深いレシプロ機に加え、ジェットエンジン黎明期の1943年に初飛行したデ・ハビランド・バンパイア戦闘機や旧チェコスロバキアで開発された高等ジェット練習機L-39の鋭い加速性を披露。また、今回特別参加したオーストラリア空軍(RAAF)のアクロバット飛行チーム「ルーレッツ(Roulette)」が運用するPC-21の高い機動性を活かした展示飛行の醍醐味を堪能できることであり、二日間にわたり来場した観客を魅了した。
「HARS」航空博物館の魅力
地上展示では、空港敷地内にあるHARS(Historical Aircraft Restoration Society)航空博物館が所有する航空史を支えた旅客機、輸送機、練習機そして戦闘機の内部公開も実施され、訪れた人たちに対して航空機の構造や運用思想への理解を深める機会となった。加えて、初日に開催されたDC-3によるエンジン始動デモンストレーションでは、星型エンジン特有の重厚な排気音や振動が披露され、1936年から運用が始まり今年で90年目を迎えた航空機が持つ独特の存在感を再認識させた。また、世界で数少ない飛行可能なロッキードC-121C スーパーコンステレーション(愛称: Connie)とカンタス航空の旅客機、ボーイング747-438「シティ・オブ・キャンベラ」の機内見学を目当てに開場とともに親子連れやカップルで早くも長い列ができた光景を見て、来場者が航空機を単なる展示物としてではなく、地域文化や歴史の一部として親しんでいる様子からは、日本とは異なる「航空文化の社会的浸透度」を強く感じさせられた。
機内見学には博物館の専門ボランティアが付き機体全般の説明以外にも様々な質問に応えてくれる。またこのB747では機内見学の他、機外に出て主翼の上を歩く「ウィングウォーク(Wing Walk)」や操縦席に座って各機器にも触れることができる「コックピットツアー」などの特別プログラムも用意されており、航空機ファンのみならず、家族連れや若年層にも配慮された運営も好評であり、航空機を知ってもらう体験プログラムや航空関連グッズ販売など、「参加型イベント」が充実していた点もこの航空ショーの魅力的な要因の一つと言える。
オーストラリア製大戦機
日本では馴染みの少ないオーストラリで製造された歴史的価値の高い大戦機群が来場者の視線を集めた。その中でもCAC ワイラウェイ練習機、CAC ウインジール練習機,そしてCAC CA-18ムスタングなどの機体は、2021年1月に飛行可能な軍用機を運用する「空軍遺産飛行隊」として再編成されたオーストラリア空軍第100飛行隊(100SQN)によって動態保存を保ち運用されており、同国が航空遺産の保存活動にいかに力を注いでいるかを強く印象つけるものであった。この他にも会場では同部隊で保存されているスーパーマリン スピットファイア Mk VIII、ロッキード ハドソン Mk IVAなども展示された。このように第二次世界大戦期に実戦投入された機体が地上展示されるだけでなく、実際に飛行可能な状態で維持されている点は羨ましい限りである。また、今回の展示機の中で注目すべきワイラウエイ練習機は、1936年に設立されたコモンウエルス・エアクラフト社が初めて生産した航空機でもあり、同国の航空技術史上の重要な存在である。現在、飛行可能な機体は世界的にも極めて少なく、そのエンジンサウンドと取り扱いがしやすくその軽快な飛行には、多くの航空機ファンが魅了されてきた。
毎年開催に意欲
2007年に地域のコミュニティ委員会によって始まった旧名称である”Wings Over Illawara”。その規模を大きくし、2025年12月にAMADA財団から運営を引き継いだポール・ベネット・エアショーが今年から”Wings Over Shellharbour”の冠で最初の航空ショーを開催実施したこととなる。
本航空ショーの主催者として名を連ねた著名なアクロバットパイロットであるポール・ベネット氏は、アジアや欧州でも高い知名度を誇り、迫力ある低空機動や編隊飛行で知られている。さらに、世界最大級のWarbirdイベント「EAA AirVenture Oshkosh」にも参加経験を持つなど、その活動は国際的評価も確立している。
このたびのショーでも所有するTBM グラマン・アベンジャー、ホーカー・シー・フューリー、ノースアメリカン T-28 トロ-ジャン、カーチス P-40 キティホーク などの展示飛行が実施され、今まで隔年の開催を毎年開催にしたいと記者会見でその抱負を語っている。”Wings Over Shellharbour”は、単なる航空ショーにとどまらず、航空史の継承の大切さとオーストラリアの航空文化を体感できる場として、極めて完成度の高い航空ショーであったと言えるだろう。80年の時を経て大戦機が現代の空に再び命を吹き込まれる光景は、航空機遺産を未来へ繋いでいこうとする主催者側の姿勢が随所に見受けられた点も印象的であった。
⬜️ 掲載誌:月刊Jwings 8月号/イカロス出版

⬜️Monthly JWings August Issue/ Ikaros Publications
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