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Volandia Parco e Museodel Volo, Malpensa, Italy

ルネッサンス時代の傑作が生みだす歴史と文化、そして魅力的な街並みが多いイタリアでも屈指の人気観光都市、ミラノ。 その空の玄関口、マルペンサ(Malpensa)空港に隣接した250,000m²の敷地に「Park & Museum」として家族で楽しめる交通博物館がある。元々はイタリアの航空機産業カプロニ(Caproni/現:アグスタウエストランド)社の組立工場があった跡地であり、敷地内には80機以上の航空機の他、興味深いベルトーネコレクションの車が保管され、そして鉄道など多岐にわたる展示が見学できる。

今月号では、イタリアで初めて実用航空機を開発・製造したカプロニ社の歴史と航空機と、魅力的なイタリアの航空機を紹介する。


イタリアと日本における関係

1920年5月31日、現在の代々木公園の地に、イタリア陸軍航空部隊の若き飛行家たち、25歳のアルトゥーロ・フェラリン中尉と24歳のグイド・マジエーロ中尉とが操縦する2機のアンサルドS.V.A複葉機が到着。彼らはエンジニアのジーノ・カッパンニーニとロベルト・マレットとともに、ローマから東京に向けた約18,000キロに及ぶ南周りの航路を約3ヶ月で制覇し、日本で一躍有名となった。当時の世界情勢と言えば、第一次世界大戦が終了(1918年)した直後でもあり、独立運動や内戦など、経由する国自体が情勢不安定であり、世界初の欧州-極東間の飛行は世界的な偉業ではあったが、同時に危険が伴う一大遠征飛行であった。2年後の1922年にはファシスト党を率いたムッソリーニが政権をとると、イタリアの極東政策は軍需機器の市場拡大として中国へ傾注したが、1938年以降は日本との経済協定に重点を置き、日本陸軍はフィアットBR.20チコーニャ双発爆撃機を85機購入し、イ式重爆撃機として中国戦線に投入した。

また、第二次世界大戦中の1944年6月には日本海軍はカプロニ社が開発中のターボ・ジェットエンジンに興味を示し、ライセンス契約を締結している。当日、日本海軍の庄司元三海軍中佐がカプロニ社からの資料を日本へ持ち帰る帰途、まさに欧州戦線は終戦となり、庄司中佐は自決、皮肉にもカプロニ社の技術は日本へ届くことはなかった。その後、ドイツから入手したMe262の設計図の一部を参考に製造された日本発のジェット戦闘攻撃機「橘花」が終戦の1945年8月7日に初飛行したことは皆さんも知る所である。


魅力的なイタリアン・メイド機

第一次・第二次大戦を通じてイタリアでは、フィアット社、マッキ社、ピアジオ社そして、カプロニ社など11の航空機企業が乱立していた。これは、当時のドイツやアメリカのように国自体の工業力が高くなかったことに起因するものであり、有事の量産体制には大きな支障が常につきまとった。しかし、各社毎の機体の種類は豊富であり、魅力的な航空機が生産されたことは間違いない。本博物館ではフィアット社製G.46練習機、マッキ社ではドイツのダイムラー・ベンツ製DB.601(水冷・倒立V12気筒/1,100馬力)エンジンを搭載したMC.202(レプリカ)や高出力DB.605(水冷・倒立V12気筒/1,475馬力)エンジンを搭載したC.205(レプリカ)などが展示されている。

また、戦後の航空機の代表格としてフィアットG.91戦闘爆撃機や日本では”ベスパのスクーターで有名なピアジオ社製の汎用航空機P166DL3やジェット練習機として開発されたSIAI Marchetti S-211など個性的な航空機を見学することができる。


先駆的、しかし短命なカプロニ社

展示館のテーマの一つに「カプロニ工房」が再現され当時の研究・開発の写真、空力実験データパネルなどが展示されている。

イタリアにおける航空機の開発は、1908年にジャンニ・カプロニ伯爵が起業し、1911年に実用航空機を製造したことに始まる。第一次世界大戦が始まるとカプロニ社はイギリス、フランス、アメリカで構成された連合軍の需要に応えるように、輸送機や爆撃機の開発・生産に力を入れ事業を拡大させた。また、1931年には空気圧縮によって飛行するモーター・ジェット実験機カプロニ・カンピニN.1を開発し、独特なデザインとユニークな推進性が諸外国より脚光を浴びることになる。しかし、第二次大戦後においては航空機の性能やデザインに時代遅れ感を払拭することができず、同じイタリアのメーカーであったフィアット社やマッキ社の技術革新にはついて行くことができず、結果、販路を失い1950年に航空機企業としての活動を停止、その後はオートバイや車の開発・製造をしてきたが、1983年にアグスタ(現:アグスタウエストランド)に吸収された。


後世に残るカプロニ社の遺伝子

工房の中にはパネルと当時の写真以外に実機としてCaproni Ca113とCaproni Vizzola C22が展示されている。

Ca113は1931年6月にアクロバット飛行を目的として製造された複葉機であり、当時としては珍しいスチールのフレームに木製の翼を纏ったPiaggio(ピアジオ)製370馬力のエンジンを搭載した航空機であった。 もう一機展示されているCaproni Vizzola C22は練習機として開発され、1980年7月に初飛行をした二人乗り小型ジェット機であった。小型航空機ながら、引き込み式の首車輪形式を採用した金属製の航空機として注目されたが、試作機2機が制作されただけで、実際に生産されることはなかった。

戦前よりカプロニ社の経営に参画してきたアグスタ(Agusta)社は戦後の1953年に独自でヘリコプター開発を再開、当時はアメリカのベル(Bell)社のモデル47ヘリコプターをライセンス生産し、その後、独自でタービンエンジンを搭載したアグスタA101Gで成功を納めることになる。その後、カプロニ社当時の技術である「引込み式の着陸装置」を小型ヘリコプター採用し、商業的な成功を世界的に納め現在に至っている。


民間機や軍用機、そして日本では見ることができない試作機など、テーマや年代別に、魅力的な航空機が展示されているヴォランディア交通博物館。今回はすべての展示機体を紹介することは出来ないが、空港ターミナルから徒歩でアクセスでき、ミラノに観光で立ち寄った時は是非、足を運んでいただきたい。


<訪問のためのインフォメーション>


Volandia Parco e Museo

del Volo, Malpensa,Italy


所在地 :‪ Aeroporto Milan-Malpensa

          Via per Tornavento, 15

          Somma Lombardo VA

電話番号 : +39-0331-230007

Web sight : www.volandia.it


開館時間 : 毎週火曜日から金曜日 10:00-19:00

        毎週土曜日と日曜日  10:00-19:30

        閉館一時間前から入場できないので注意が必要

入場料 : 大人14ユーロ

子供 6ユーロ(3歳以上12歳未満 (2021年9月現在)

アクセス : ミラノ・マルペンサ(Milan-Malpensa)空港第一ターミナルから徒歩10分。

第一ターミナル出発(チェックインカウンター)階17番出口

から外に出て、遊歩道(スロープ)に沿って博物館に繋がる一本道を歩く。


⬜️ 掲載誌: 月刊航空情報 2月号 / せきれい社


<Information for visit>


Volandia Parco e Museo

del Volo, Malpensa, Italy


Location: Aeroporto Milan-Malpensa

Via per Tornavento, 15

Somma Lombardo VA

Phone number: +39-0331-230007

Web sight : www.volandia.it


Opening hours: Every Tuesday to Friday 10: 00-19: 00

Every Saturday and Sunday 10: 00-19: 30

Please note that you cannot enter from one hour before closing.

Admission: 14 euros for adults

Children 6 euros (3 to 12 years old (as of September 2021)

Access: 10 minutes walk from Milan-Malpensa Airport Terminal 1.

Departure from Terminal 1 (check-in counter) Exit 17 on the floor

Go outside and walk along the promenade (slope) to the museum.


⬜️ Publication Magazine : Monthly Aireview February Issue / Sequirey S.A.

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