Swiss Transport Museum, Luzern Swiss
- Junji Sato
- 2022年2月3日
- 読了時間: 4分
更新日:2022年7月6日
スイス中央に位置する古都ルツェルンに、1959年にオープンした交通博物館がある。20,000平方メートルの広大な展示敷地内に、陸・海・空・宇宙すべての交通機関の歴史を3,000点にのぼる多彩な展示や映像アトラクションで紹介している。今月号では、スイスで人気の高い博物館の航空機コレクションを紹介する。
「空飛ぶ救急隊」の発祥の地
19世紀後半に英国で始まった産業革命により各国では鉄道の敷設が急激に広がった。1912年、スイスは山岳鉄道のユングフラウ鉄道が開通。また、世界一の急勾配を誇るピラトス山岳鉄道が次々に開通し、世界中から登山に訪れるようになった。しかし遭難事故も多く、遭難者の探索・救出のためスイス航空救助隊「Rega(レガ)」が1952年に設立され、現在まで何千という人命を救ってきた。レガの活動は、山岳事故から交通・スポーツ・仕事中の事故や病気やケガになった羊や牛をモッコで吊り下げて山麓まで搬送することもある。コロナ以前の2019年の出動回数は実に15,000件を超えている。
現在レガは、スイス国内にチューリッヒの他12か所の基地を有し、平地用ヘリコプター6機・山岳用ヘリコプター11機を保有し活動している。ヴェリス州の「エアー・グレッシャー(Air Glacier)」、ツェルマットの「エアー・ツェルマット(Air Zermatt)」と協力している。
生まれ変わったスイスのフラッグキャリアー
名門スイス航空(当時)は、1931年にアド・アストラ・エアロとバルエアの合併により国営航空会社として設立され、欧州域内、アジア、南米や北米大陸など空の交通網を古くから開拓してきた。また、1933年には欧州の航空会社として初となるスチュワーデス(現在のキャビンアテンダント)を採用し、1957年には南回り欧州線として羽田空港への乗り入れを契機に、極東路線網を拡大していった。やがて1970年代より、堅実な経営と事故を起こさない高い安全性から、スイス航空は当時「空飛ぶ銀行」と呼ばれるようになり、1990年以降はスイスホテルを買収し、経営の多角化に舵を切ることになる。
しかし「航空の自由化」が促進された1990年代後半から交渉した航空連合形成(アライアンス)の失敗や、1998年にカナダで起きたMD-11墜落事故により顧客離れが顕著となり、巨大化した経営を逼迫させた。さらに2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件で航空需要が落ち込み資金繰りが悪化したことにより同年10月2日に経営破綻したことは記憶に新しい。
現在はスイス政府のつなぎ融資により、2002年3月31日よりスイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)として運航が再開。2006年にはスターアライアンスへの加盟も承認され、2007年からはルフトハンザドイツ航空の傘下に入り同グループの主要航空会社として49か国、105都市を結んでいる。
スイスが誇る航空機メーカー
スイスの航空機メーカー、ピラタス・エアクラフトの設立は1939年と古い。ピラタスP-2はスイス空軍用に開発された空冷V型シングルエンジンを搭載した練習機であり、55機が製造され、スイス空軍は1981年まで運用し、現在でも民間に転用されている。
日本では、1959年に初飛行したピラタスPC-6が南極観測隊でも使用された。現在ピラタス・エアクラフトはタピラタスPC-21の成功もあり、同社は中型ビジネスジェットピラタスPC-24の製造し、2018年に初号機を納入し2021年1月には100機目の引渡しが完了した。
魅力的な航空展示館
航空関係の展示としては30機を越える航空機が展示されている。歴史的な航空機としてはスイスのアーマン・デュフォーとアンリ・デュフォーの兄弟の製作したデュフォー 4や、航空の歴史にとって貴重なフランスのブレリオXl-b,オランダのフォッカーF.VllやロッキードL-9 オライオンが展示され、アメリカのダグラスC-47(DC-3)、コンベアCV990などが野外に展示されている。またベルトラン・ピカールが世界一周飛行に挑戦した気球、ブライトリング オービター 2や、スイス人宇宙飛行士クロード・ニコリエが搭乗したスペースシャトルSTS-46で打ち上げられ、のちに回収された人工衛星EURECAも展示され航空・宇宙全般についても学ぶことができる。
6~8月はスイスの旅行シーズンで、この時期に開催される航空祭と併せて読者の皆様にも立ち寄っていただきたい博物館である。
訪問のためのインフォメーション
Swiss Transport Museum
スイス交通博物館
住所:Verkehrshaus der Schweiz Lidostrasse 56006 Luzern
電話:+41 (0)41 375 75 75
e-mail:info@verkehrshaus.ch
開館: 夏期(4月〜10月)10:00-18:00
冬期(11月〜3月)10:00-17:00
1月1日、12月25日は休館
料金:大人56SFR, 学生42SFR、15歳以下16SFR(2022年1月現在)
※上記料金は1日パスの入場金額
交通:ルツェルン駅地上にあるバスターミナルの販売機で乗車券を購入。6か8番のバスで、交通博物館 (Verkehrshaus-Lido)で下車
⬜️ 掲載誌:月刊航空情報 3月号 / せきれい社

Information for your visit
Swiss Transport Museum
Swiss Transport Museum
Address: Verkehrshaus der Schweiz Lidostrasse 56006 Luzern
Tel: +41 (0)41 375 75 75
E-mail: info@verkehrshaus.ch
Open: Summer (April - October) 10:00-18:00
Winter (November - March) 10:00-17:00
The museum is closed on 1 January and 25 December.
Admission: 56 SFR for adults, 42 SFR for students, 16 SFR for under 15s (as of January 2022).
The above prices are for a one-day pass.
Transport: Buy a ticket from the ticket machine at the bus station above Lucerne station, then take bus 6 or 8 and get off at the Transport Museum (Verkehrshaus-Lido).
Website:https://www.verkehrshaus.ch/en/home.html
⬜️ Publication Magazine : Monthly Aireview March 2022 / Sequirey S.A.
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