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Queensland Air Museum, Caloundra, QLD Australia

ブリスベン市内から車で1時間半。サンシャイン・コーストに隣接するカラウンドラ(Caloundra)空港の広大な敷地に立地し、展示保有機数80機を超えるクイーンズランド州では最大の航空機コレクションを有するクイーンズランド航空博物館。この航空博物館では、同州に重点を置いた「航空遺産」を収集し、保存することを目的として航空機以外では、航空装備品やエンジン、写真そして書籍を含む膨大な資料を所蔵している。


紆余曲折な航空博物館の開館

クイーンズランド航空博物館(以降、QLD航空博物館)はオーストラリアの航空史にとって航空機、そして航空機の開発に関わる重要な文献、遺物を保存するため他の関連組織と連携するため「オーストラリア航空歴史協会」の傘下で活動をしている。

同博物館の開設にあたっては、1974年6月2日にオーストラリア空軍で運用されたキャンベラ爆撃機を譲り受け展示されたことがその起源となっている。展示された場所は現在の場所とは異なり、ブリスベン南の郊外クラビー(Kuraby)にあるパイオニア・パークであった。

しかし3年後の1977年にはこの公園は閉鎖され、展示されていたキャンベラ爆撃機は、現在のブリスベン国際空港に隣接するナジー(Nudgee)地区に移され、同時に第二次大戦中(1943年)に開発された連合軍初のジェット戦闘機、グロスターミーテイア(Gloster Meteor)TT.20(複座夜間戦闘機/標的曳航機に改造)と、2機のデ・ハビランド・シー・ベノム(de Havilland Sea Venom)、そしてデ・ハビランド・バンパイア(de Havilland DH.100 Vampire)1機が英国政府より寄贈されている。これをきっかけにして、年を追うごとに機体のコレクションは増加していくが、しかし、1980年代初頭には、ブリスベン新空港建設案がまとまり、展示されていた機体は一時的に空港建設敷地内の一角に一時保管されることが決定。しかしこれでは、「オーストラリア航空歴史協会」が最初に目論んだ「遺産保存の継承」を遵守することもできず、また、法外な賃貸料が最終的な航空博物館のこの地からの立ち退きの決断となった。

この事が転機となり、カラウンドラ自治体法に基づき「恒久的な航空博物館の建設」が提唱され、公共的な「歴史遺産」を保管・維持するためにランズボロー・シャイア評議会(Landsborough Shire Council)にて、サンシャイン・コーストに航空博物館の建設が採択された。運営にあたっては、自治体が基金を募り、非営利のカラウンドラ地域所有の航空博物館として建設が承認され、クイーンズランド州の「航空遺産」を後世に継承していくことで採択されている。

1986年6月14日、QLD航空博物館でコレクションされた機体や文献等はカラウンドラ空港に隣接する敷地内で展示保管されることになり、1年後の1987年4月4日には正式に「QLD航空博物館」として現在の場所を定住の地として開館することになったのである。


オーストラリア航空機製造について

日本ではあまり知られていないが、オーストラリアには航空機の製造機メーカーが1930年代後半にかけて立ち上がっている。

代表的な製造機メーカーとしては、オーストラリア政府が所管するガバメント・エアクラフト・ファクトリーズ(Government Aircraft Factories以降、GAF表記)と民間航空機製造会社コモンウェルス・エアクラフト・コーポレーション(Commonwealth Aircraft Corporation/以降、CAC表記)とデ・ハビランド・オーストラリア(de Havilland Australia/以降、DHA表記)である。

1938年、ドイツがオーストリアを併合。英連邦に属しているオーストラリアでは、英国での航空機や他軍需生産の増大から第二次世界大戦の予兆を察し、当時の政府はオーストラリアの航空機製造能力の欠如と英国からの航空機の供給が絶たれることを懸念、その対応に追われていた。

当時GAFの第一工場は、ビクトリア州メルボルン郊外のフィッシャーマンズベンド(Fishermans Bend)にあり、第二次世界大戦までは、航空機製造局(Department of Aircraft Production/以降、DAP表示)として知られていたが、更なる航空機の供給を確保するため、1939年オーストラリア政府は「航空機供給開発省(Aircraft Advisory Committee/以降、AAC表示)」を設立、その中枢部として「航空機製造部門」を置いていた。

特筆すべきは、この時期(1939年)には、オーストラリアの航空機産業はほとんど存在していなかったことである。しかし、同年9月にはドイツ軍がポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。しかし、オーストラリアの民間航空機製造企業であるCACは、1939年にやっと最初の製造機である単発レシプロ練習機ワイラウェイ(Wirraway)を3機完成させ、2番目の単発練習機であるワケット(Wackett)を試作している段階であった。

一方、デ・ハビランド・オーストラリア(DHA)は、それまで英国の親会社が製造した航空機を部品としてオーストラリアに輸入し、組み立てることを主体としていたが、1939年5月に輸入した胴体と現地で製造した主翼で作ったタイガーモス20機をオーストラリア空軍に納入することから本格的に航空機の製造をスタートしている。1939年半ばまでのオーストラリアにおける全機種の総生産数は80機前後であり、これらの多くは英国航空機の代表タイガーモスのような「木と布」構造であった。

対照的に、1939年7月にはGAFあてに180機の中翼双発の陸上偵察と雷撃機能を備えた全金属製ブリストル・ボーフォート(Bristol Beaufort)が発注され、オーストラリア空軍と英国空軍に同数ずつ生産され、配備されている。

しかし当時、オーストラリアではボールベアリングの製造技術が追いつておらず、英国から調達したものを現地で代用し、製造に組み込む必要があったため、度々設計から製造にかかる時間的なロスが生じていた。

1943年1月30日、オーストラリア政府は350機のブリストル・ボーファイター(Bristol Beaufighter)製造に着手したが、当時は欧州戦線の戦況が不安定であり、英国からのエンジン供給が不透明だったため、保険としてブリストル製の機体に米国製ライトGR-2600サイクロンエンジンの再搭載も考案されたが、最終的にはオーストラリア製のボーファイターには輸入したブリストル製ハーキュリーズエンジンを搭載した。最初のDAPボーファイターは1944年5月26日に初飛行し、生産と納入はボーフォートのそれとわずかに重なり、最初の20数機のボーファイターは最後の50機あまりのボーフォートと同時に生産・納入されている。GAFの受注は450機まで増加したが、365機が製造されたところで終戦(1945年)を迎え、さらに21機の部分製造機が納入されなかったため、生産計画は打ち切られている。

戦後1953年以降、GAFはライセンス生産により48機のイングリッシュ・エレクトリック社のキャンベラ(English Electric Canberra)双発戦術爆撃機を製造。完成した機体は、航続距離を伸ばしたMk.20タイプと呼ばれた。多くはベトナム戦争でオーストラリア空軍(RAAF)の戦力として活躍し、一部は後に機種転換練習機としたT.4をベースにしたT.21作戦訓練標準機に改修されている。

またGAFは、1958年に英国の航空宇宙企業と共同でGAF Jindivikを設計することで、高性能のジェット動力式無線操縦標的ドローンに対する新たなニーズに応えた。バイパー・ジェットエンジンを搭載し、飛行後はスキッドに着地して回収することができ、1960年代までオーストラリア空軍や英国空軍で使用されてきた。

1987年以降、GAF航空機工場は再編され、エアロスペース・テクノロジーズ・オブ・オーストラリア(以降、ASTA表記)と改名。さらに1995年6月には、ASTAは民営化となり、現在ASTAはボーイングオーストラリアの一部となっている。


訪問を終えて

民間機と軍用機、そして自家用機に到るまで、実に80機の展示機体、修復待ちの保管機体14機、修復中の機体3機の計97機(2023年6月現在)の見学が可能なこの航空博物館は、1989年以降、軍用機についてはオーストラリア陸・海・空軍、英国陸・海・空軍から提供を受け、また民間機についてはアンセット航空、クイーンズランド航空、トランスオーストラリア航空、タスマニア航空などが中心となって機体や当時の文献、そして装備品などが提供されている。オーストラリアで見学できる珍しい機体としてはCAC製のワイラウェイ(Wirraway)、ワケット(Wackett)、ウインジール(Winjeel)、そしてデ・ハビランド・ドローバー(de Havilland Drover)の展示機である。

QLD航空博物館は、訪問者からの入場料と個人からの寄付によって航空機の維持と整備、施設の管理を行っている非営利団体である。読者の皆さんが訪問する事でこのコレクションの保存を継続する事ができ、ゴールドコースト観光中に足を運んで訪ねていただきたい航空博物館である。


訪問のための一般情報


Queensland Air Museum

住所:Caloundra Aerodrome, 7 Pathfinder Drive, Caloundra., QLD

電話:(07) 5492 5930

電子メール:webmaster@qam.com.au

ウェブサイト:qam.com.au

開館時間:毎日午前 10 時 – 午後 4 時

(イースター前の聖金曜日とクリスマスを除く)

入館料:大人A$25 子供A$12.50(2023年6月時点)

アクセス:ブリスベン空港からレンタカーで約1時間20分(90km)、

列車の場合:ブリスベン空港駅からAirtrain BrisbaneにてEagle Junction駅でIPNAに乗り換えLandsborough駅へ、ここから605番のバスでCaloundra Rd at Palm Village Caravan Park下車徒歩8分(700m)約2時間半


⬜️掲載誌:月刊航空情報 2023年9月号/せきれい社


General information for your visit


Queensland Air Museum

Address: Caloundra Aerodrome, 7 Pathfinder Drive, Caloundra., QLD

Phone: (07) 5492 5930

Email: webmaster@qam.com.au

Website: qam.com.au

Hours: 10 a.m. - 4 p.m. daily

(except Good Friday before Easter and Christmas)

Admission: Adults A$25 Children A$12.50 (as of June 2023)

Access: 1 hour and 20 minutes (90 km) from Brisbane Airport by rental car,

By train: From Brisbane Airport Station, take Airtrain Brisbane to Eagle Junction Station and transfer to IPNA at Landsborough Station, then take bus #605 to Caloundra Rd at Palm Village Caravan Park and walk 8 minutes (700m). (700m) about 2.5 hours


⬜️ Magazine: Monthly Aireview September 2023 / Sequireysha Co. Ltd.

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