Mirage 5 BD 09 Restoration Group, Sint-Truiden/Brustem, Belgium
ミラージュ5BD 09の復元にかける男たち
ベルギーの北東部、オランダと国境を接し、国立公園の中に広がる広大な自然と古代の城や醸造所など歴史が息づく街が点在するリンブルグ州は、両国にとっても観光の起点となっている場所である。
ここリンブルグ・リージョナル空港(Limburg Reginal Airport)には、ベルギー空軍がかつて利用した旧ハンガーがあり、一角にはミラージュ5戦闘機を修復し一般展示しているグループが活動している。2019年2月初頭に報道関係が招待され、ベルギーのテレビ局、そしてオランダの新聞でも紹介された。元ベルギー空軍のスタッフで構成され、個人所有でオリジナルの状態を維持したミラージュ戦闘機のお披露目とあり注目を浴びた。しかし2020年2月以降は新型コロナの感染拡大に伴い、制限された行動の中でも魅力的な情報を発信している。 幅広い年代層からの支持・支援を受けている同グループの活動を現地からレポートする。
ミラージュ50周年を記念して
このミラージュBD 09(製造番号209)がベルギー空軍に引き渡されたのは1971年2月11日であり、同年3月25日にベルギー南西部の防衛のためフロレンヌ(Florennes)の第8航空団(Blue Cocotte)に配属された。また、同年12月にはビエルセ(Bierset/リエージュ空港)基地の第1航空団(Thristel)に配置転換され、1986年に再度ビエルセに戻り第2航空団 (Comet)の所属、そして同基地内の第42航空団(Mephisto)にも配属され4つの航空団で運用された機体であった。
1994年1月13日の最終フライト後はオランダと国境を接するウエールデ(Weelde)空軍基地にて保管され、その後、フランスの軍需エレクトロニクスSagem Companyによって購入され、ボルドー近郊のラ・テスト・ド・ブッフェ(La Teste-de-Buch)空軍基地に運び込まれることになる。
21年が経過した2015年3月に現在の”Mileage 5 BD 09 Restoration Group” の代表であるマルセル・デ・ペッター(Marcel de Petter)は、この基地を訪問し、ほぼ完全な状態でBD05と対面することになる。そして「ミラージュ愛好家(Miragist)」のために購入を検討することになる。 購入の一番の動機は、ベルギー空軍で運用された1970年から50周年を記念する2020年に一般公開することであった。
多彩なアイデアでリピーターを楽しませる
フランスからの搬送上の手続きに時間を要し、BD 09がリンブルグ・リージョナル空港に到着したのは2018年2月1日であった。早速専用ハンガーに運ばれ、1年後に公開が出来るよう修復作業が施された。2019年2月1日に関係者、プレスを招待した公開が実施された。その後は定期的に一般公開が開催され、記念グッズの販売などで資金を集める日々が続いた。また、多くの方に足を運んでもらうプログラムを打ち出していく。先ずは昔、ミラージュ戦闘機に関わったベルギー空軍退役軍人の方々への呼びかけを行った。これにはMirage 5 Pilot Associationの協力もあり多くの退役軍人とその家族が参加し、50周年に向けた食事会や撮影会などが催された。また、ファッション誌のロケ材料として機体を提供し、レンタル料などから運営資金を確保すると同時に、若世代の方々にも興味を持っていただくプロモーションには積極的に取り組んだ。しかしこれは一過性のことであり、継続的な訪問客の発掘とリピーターへの魅力的なアプローチが必要であった。 そのため、継続的な運営資金の確保に向けた新しいプログラムを50周年に当たる2020年2月に発表することになる。 それが“ミラージュ・センセーションフライト”であり、3Dのバーチャルフライトを体験できるプログラムである。離陸から空中機動と戦闘、そして着陸までを20分のプログラムにまとめ、ミラージュ戦闘機の実際の空中機動と飛行性の高さを実体験できる飛行シュミレーターとして瞬く間に話題となった。本来は50周年記念式典で発表される予定であったが、新型コロナ感染拡大によりそれも叶わなかった。しかし、代表のマルセル・デ・ペッター(Marcel de Petter)のコメントからは「このプログラムをスタートしてからは、顕著にDB09クラブメンバー(2020年現在1905人)が増えてきている。今後もチーム内でいろいろなアイデアと参加者の声を反映したプログラムつくりに心がけていきたい」とその意気込みを語ってくれた。
「地上滑走」は最終目標
本来であれば記念すべき50周年にあたる2020年2月後半から蔓延している新型コロナの影響で、彼らが開催するBD09の展示会にも制限が入り、盛大な記念式典をはじめ、思うようなプロモーションができないことが一番残念である。現在は、エンジンは稼働する状態ではないが、2年内にはエンジンランができるまでに資金を集めて披露していきたい計画を抱いている。今回のインタビューに応じてくれたマルセル・デ・ペッター(Marcel de Petter)は、第8航空団(Blue Cocotte)の教官としてミラージュ戦闘機を18年に渡り操縦したパイロットであり、またこのBD09にも乗務した経験の持ち主である。また、彼のチームもまた元ミラージュ戦闘機に携わっていた整備士が集っているので決して不可能なことではない。 しかし、機体本体の維持費用やハンガー費用など毎月の出費は大きい。 感染予防のため顧客の訪問が叶わない状況の中で、少しでも資金を確保するため、魅力的なオリジナルグッズの通信販売も本格的に手掛けるようになった。 地元クラブのメンバーそして退役軍人や協会関係の「口コミ」による宣伝サポートもあり、現在、彼らの活動は「低空飛行」ながらも維持できている。2021年も多難な年になると予想されるが、多くの”ミラジスト(Miragist)”の心を掻き立てる2年後の”エンジンラン”に期待してやまない。
ミラージュ戦闘機
米軍機と比べると日本の読者にはなじみが薄いフランス製ミラージュ戦闘機。 1945(昭和20)年から始まる「冷戦期」において欧州各国はアメリカとの関係強化を模索するという時代背景もあり、主としてアメリカ製戦闘機を採用してきた。政治的な配慮もありフランス製戦闘機は、母国フランスをはじめイスラエル、アルゼンチン、パキスタンそして東アジアの一部の国で採用されてきた。 このダッソー(Dassault)社製デルタ翼戦闘機をフランスが中心となって開発してきた理由は、複雑な工法を使用せずに後退角を大きく取れるので、遷音速域での空気抵抗が小さく、瞬発的な高速性を発揮するのに有利であったことがまず挙げられる。そして、機体の小型・軽量化が容易なこと、翼面積を大きく取れることに加えて、高迎え角飛行時でも失速し難いという大きな利点があったためだ。 結果、アメリカやソ連(現:ロシア)製の戦闘機と比べても高速域での運動性には卓越したものがあり、1967年6月から始まる第三次中東戦争、1973年9月から始まる第四次中東戦争では「固定翼」をもったミグ、スホーイ戦闘機との空中戦においても、その撃墜数が本機の性能の高さを世界に示すこととなった。
ベルギー空軍では小さな国土の防衛で必要な「運動性と加速力」を担える攻撃戦闘機として1968年2月16日にミラージュ5戦闘機が採用が決定され、1970年から単座型の5BA(63機と偵察型27機/機首の形状が通常型と異なる)と複座型の5BD(16機)の計106機が配置され1993年末まで運用された。
訪問情報:
Mirage 5 BD 09 Restoration Group
住所 :Lichtenberglaan 1090 3800 Sint-Truiden, Belgium
Web sight :https://www.miragebd09.be/
Facebook :https: //www.facebook.com/groups/190939791496166/
◽️掲載誌:月刊航空情報 2021年3月号 / せきれい社
About the BD 09
Commandant Marcel De Petter flew the Mirage 5 for almost eighteen years, a great part as an instructor in the 8th Sqn. He has accumulated 3.200 hrs on this aircraft.
On May 8 1985, in the vicinity of Gütersloh, Marcel experiences an engine failure. He ejects and gets out of it without much consequence. Exactly 25 years later he is approached by Marc an aviation fan who explains him that he is in possession of a Mirage dashboard, lacking the instruments but bearing the words “BA 19” … Marcel becomes the owner and starts looking for instruments and control lights for the dashboard.
Helped by numerous friends and the BA 27 CC, Mirage technicians, Marcel succeeds in rebuilding this dashboard… It’s in the course of these researches that he finds himself in Paris in a Mirage spare parts amateur’s home. He discovers the nose and the cockpit of the BA 27: eight meters long and two tons heavy. He spends his savings and becomes the owner. In May 2014 the aircraft is placed in a big garden shed in Marcel’s backyard. With the help of technicians and Bierset sympathizers the cockpit is made operational again: night lighting, gunsight, everything works.
But you would wrongly know Marcel if you’d think he would stop there. The urge takes him to possess a whole aircraft… He succeeds in convincing the Mirage Pilots Association and and Jacques Waldeyer as sponsor to help him becoming the conservator of a two-seater aircraft in which he flew numerous missions. This is the BD 09, located at La Teste de Buch, near Arcachon. SOFEMA Corporation owns it and agrees to sell it.
The BD 09 starts to fly in Belgium in March 1971. It is decommissioned and placed into storage in 1994. Five years later, the aircraft, together with 26 others, is repurchased by the French Sagem Company and taken by road to France. We come across its traces again in 2013 in Paris where it is auctioned but doesn’t find any buyer. It is then placed into storage at La Teste du Buch.
The aircraft was transferred by road on the 01/02/2018 to the former base of Brustem (St- Truiden). It is currently located in a former Air Force hangar. The technicians who worked on the BA 27 take charge of the aircraft as TEAM BD 09. Looking at it, it seems ready to go. A real jewel of our aviation that little ones and grown-ups will enjoy… The elders can still smell the particular scents of that superb machine and the youngest discover the military fighter aviation as it was almost thirty years ago already.
訪問情報:
Mileage 5 BD 09 Restoration Group
Address :Lichtenberglaan 1090 3800 Sint-Truiden, Belgium
Web sight :https://www.miragebd09.be/
Facebook :https: //www.facebook.com/groups/190939791496166/
◽️Published Magazine:Monthly Aireview March 2021 / Sequireysha Ltd.
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