top of page

Hubschraubermuseum Bückeburg, Germany

ハノーバー空港から車で約1時間(60km)。ブッケブルグにあるヘリコプター博物館は、回転翼飛行を専門とする航空機をコレクションしたドイツで唯一、そして世界でも数少ない航空博物館のひとつである。この博物館では、50 機を超える回転翼航空機と エンジンをはじめとしてローター(回転翼)など1000件を超える精密な航空部品や模型が展示されており、「垂直飛行」の歴史と技術について、その始まりから現在までの興味深い開発の歴史を知ることができる航空博物館である。


設立の歴史

2021年に50周年を迎えたブッケブルグ・ヘリコプター博物館。その設立は「偶然」が重なった出来事であった。ドイツ陸軍航空隊に所属していた博物館の創設者であるヴェルナー ノルテマイヤー(Werner Noltemeyer)は、1957 年から 1958 年にかけて、米国アラバマ州フォート ラッカー(Fort Rucker)にある陸軍航空学校で米陸軍との共同演習にヘリコプター パイロットとして派遣されていた。基地内には米陸軍航空博物館があり、そこで展示されていた退役航空機の先駆者たちの展示に魅了されることになる。多くの「先駆者たち」が一堂に展示され、機体の観察については年代別に展示され、彼はその技術開発の歴史的な比較が合理的でかつ、非常に有益であることに気づくことになる。帰国後、早速ドイツにおける垂直飛行技術に関連する入手可能なすべてのものを所属する基地内で保管することを始める。3年が経過した1961 年には、アチュム飛行場(Flugplatz Achum/現在のブッケブルグ陸軍飛行場)でヘリコプター フォーラムが初めて開催され、同基地内に作られた「回転翼資料館」は大きな反響を得る。その後、彼は自らコレクションした資料を広く多くの観客がアクセスできることを希望し、陸軍の承認も得て資料館を基地の外に移転する計画に邁進する。折しも観光産業が少ないブッケブルグ市の市議会も「観光名所」を設立する検討会が何回か開催され、ヴェルナーが持ち込んだ計画は1970年に議会承認され、同市に「ヘリコプター博物館」建設することが決定される。1年後の1971年には回転翼航空機と VTOL 航空機の歴史と技術を、初期から現在に至るまで見学できる「ヘリコプター博物館展」が開館。現在では、欧州では唯一50機を超えるヘリコプターがコレクションされ、ヘリコプターの原理を追求したレオナルド ダ ヴィンチの飛行に関する初期の資料も鑑賞することができるようになっている。


ヘリコプターの紀元

ヘリコプターの研究には長くて興味深い歴史が存在する。元来、垂直に離着陸できる航空機を開発するというアイデアは古代ギリシャで生まれたが、筆者を含め読者の皆さんが一番に思い起こすのは、ルネサンス期におけるレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたヘリコプター図案のスケッチである。以降、数十年にわたり、数多くの発明家やエンジニアがその開発に苦心し、飛行実験が繰り返されてきたが、実際に「浮揚」に成功したのは 20 世紀に入ってからであった。まず、ドイツの宇宙工学者であったヘルマン・ガンスヴィント(Hermann Ganswindt)は1901年6月に現在のヘリコプターに相当する動力で回転する回転翼を装備した航空機に2名を乗せて15秒間の浮揚を成功させている。それから6年が経過した1907年に入るとフランスにおいて多くの実証飛行実験が試みされた。その一番手として発明家のモーリス・レジェ(Maurice Léger)が5月に無人機ではあったが10cmの浮揚に成功。2番手として航空技術者でもあり起業家であったルイ・シャルル・ブレゲー(Louis Charles Breguet)は9月に地上60cmまで浮揚したが、操縦性不十分で4人の助手が機体の四隅で支える必要があったため、正式な飛行とは認められなかったが、しかし記録として残されている。

3番手となった発明家のポール・コルニュ(Paul Cornu)は11月に20秒の間、30cmの高さに浮揚したが、操縦する機構は装備さHermann Ganswindt Hermann Ganswindtれていなかったためその後数回にわたり試験浮遊は行なったが、良い結果が出せず途中で実験は取りやめとなっている。

試行錯誤の10年が経過した1917年、ハンガリーの航空学者であったセオドア・フォン・カルマン(Theodore von Kármán)によって4つのローターを持ったヘリコプター(PKZ-1)や同軸反転ローターを持ったヘリコプター(PKZ-2)が開発されそれぞれが浮揚に成功している。

本格的なヘリコプターによる飛行が実現性を帯びてきたのが1920年以降に入ってからであり、その中でも世界初の実用ヘリコプターは、ドイツの航空技術者であるハインリヒ・フォッケ(Henrich Focke)が開発したフォッケ・ウルフFw61であり、1936年6月26日に初飛行に成功している。Fw61の完成により安定した飛行が可能となり、人や物資を輸送する垂直航空機の新しい一歩踏み出した瞬間であった。


ヘリコプターの黎明期から実用化まで

長年に渡り多くの飛行実験が繰り返されてきたが、皮肉にもへりコプターを含む航空機の進化を促進したのが第二次世界大戦であった。

フォッケ・ウルフFw61に興味を示したドイツ航空省はフォッケにヘリコプター開発専門の新しい会社を設立することを勧め、1937年にフォッケは当時パイロットであったゲルト・アハゲリスと共にフォッケ・アハゲリス社(Focke-Achgelis & Co. G.m.b.H.)を立ち上げ、大型のヘリコプターFa 223が造成された。この機体には、コックピットと推進ユニットの間には電動ウインチを備えた保管庫があり、大型貨物や救助ゲージを引き上げることが可能なものであった。更に航続距離を延ばすために 300 リットルの落下タンクを装備することもできる汎用ヘリコプターの先駆者であった。しかし、連合軍の爆撃で失った数も多く、またトラブルも頻発し稼動率は低かったが、「量産」段階までこぎつけた最初のヘリコプターということで注目に値する。

第二次大戦後、ヘリコプターの実用化が急がれたが、実用化に至る問題点として大きな出力を得られるエンジンの開発にあった。それまでレシプロエンジンを主源としており、実際に回転翼機で垂直上昇/垂直着陸/空中静止(ホバリング)を得るには機体重量あたりの出力が小さいこともあり、多くの人員や貨物を搭載し高速で移動する飛行の実現のためにはガスタービンエンジンの開発が急務であった。

米国では、1947年から量産化された初期ヘリコプターのベストセラーであったベル・ヘリコプター社が製造したベル47もピストンエンジンの初期モデルの47Dは2座席でも馬力不足で、人員2名を乗せると何も積めない機体であった。

折しも1950年に始まった朝鮮戦争により早く、人員と物資が搭載できかつ、航続距離が長いヘリコプターが切望された。1951年には米国のカマン・エアロスペース社が世界初のガスタービン駆動(ボーイング製T50ターボシャフト)のエンジンを搭載したカマンK-225ヘリコプターが完成し、本格的なタービン時代の幕開けとなり、2年後の1953年にはカマンH-43ハスキー(米空軍名称)がターボエンジン搭載交差反転式ローター式推進装置をもち海兵隊や海軍でも運用され400機以上が生産された。

欧州では、フランスが国を挙げて後押ししたシュド・アビアシオン社が開発したSE.3130 アルエット II(Alouette II)が1956年よりガスタービンエンジンを搭載した初の量産ヘリコプターであった。1975年まで生産が続けられた本機は47カ国の軍事用としてまた、80カ国に登る民間での運用がされ1500機以上が生産された。

ドイツでは、1967年にベルコウ(Bölkow)社(現在はエアバスヘリコプター)で開発された双発の多用途ヘリコプターBo105は高い運動性能を活かし、宙返り、横転(ロール)や通常は固定翼機のみが実施できると考えられていた縦方向にUターンするインメルマンターンなどの高い運動性を見せるヘリコプターも出現し、救難、災害派遣をはじめヘリコプターは我々の生活にも身近な航空機としてその存在価値を高めている。


訪問を終えて

このブッケブルグ・ヘリコプター博物は、英国のウェストン スーパー メア(ブリストルの南西 28 km)) にあるヘリコプター博物館、ならびに米国ペンシルベニア州ウエスト チェスターのアメリカン・ヘリコプター博物館と並ぶ、世界 3大ヘリコプター博物館の内の 1 つである。

この博物館を訪れる楽しさは、初期のヘリコプターを見る楽しみもあるが、開発の起源となった歴史的背景についても知ることができるところである。

固定翼機が中心である航空博物館とは異なる感覚で訪問したブッケブルグ・ヘリコプター博物は、新たな「空の未来」を見せてくれる博物館でもある。ハノーバーに宿泊の際は、ハノーバー・ラーツェン航空博物館(航空情報2022年8月号掲載)とあわせて訪問されてみては如何であろうか。





訪問のための一般情報


Hubschraubermuseum Bückeburg,

住所:Sable-Platz 6, 31675 Bückeburg, Germany

連絡先:+49 5722 5533

Web Sight: https://www.hubschraubermuseum.de/index.php/en/ (英語)

E-mail: info@hubschraubermuseum.de

開館日:毎日10:00-17:00

入館料:大人:€9.50 子供(6 ~ 16 歳): €4.50

アクセス:ハノーバーの中央駅からS1(Sバ-ン)に乗りBückeburg駅下車(約50分)、駅から徒歩8分で到着できる。


⬜️掲載誌:月刊航空情報11月号/せきれい社


General information for your visit


Hubschraubermuseum Bückeburg,.

Address: Sable-Platz 6, 31675 Bückeburg, Germany

Contact: +49 5722 5533

Web Sight: https://www.hubschraubermuseum.de/index.php/en/ (English)

E-mail: info@hubschraubermuseum.de

Opening days: 10:00-17:00 daily

Admission: Adults: € 9.50 Children (6 - 16 years): € 4.50

Access: Take the S1 (S-Bahn) from Hannover's Hauptbahnhof to Bückeburg station (approx. 50 minutes), an 8-minute walk from the station.


⬜️ Publication: Monthly Aireview November issue / Sequireysha Co., Ltd

Follow Us
  • Facebook Classic
  • Twitter Classic
  • Google Classic
Selling My Pictures
bottom of page