Hellenic Air Force Museum, Dekeleia Air Base Greece
ギリシャは
軍事戦略上重要な防衛の要
ギリシャ空軍の細かい情報は英国、フランス、ドイツそしてオランダ、ベルギーなど他、 NATOに加盟する国々よりその情報量は多くない。元来ギリシャはアジアとアフリカの交差点という軍事戦略的にも重要な国であり、日本の約1/3の広さの国土に現在20の地域に軍用基地を備え、航空機を配備している。
過去を遡ってみると、ギリシャでの航空部隊は1911年(明治44年)にフランスの支援のもと4機のファルマン複葉機が発注されたのが始まりであった。
ギリシャ空軍はその後のバルカン戦争(1912-13年)、第一次大戦(1914-18年)、希土戦争(1919-22年)、第二次世界大戦(1939-45年)と参戦してきたが、第二次世界大戦ではナチスドイツ軍によって壊滅させられ、大戦中はイギリス空軍にて1飛行隊として再建され、スピットファイアやハリケーンなどを運用してきた。 戦後はアメリカの後押しにより、米国製の航空機を多種運用してきたギリシャ空軍であるが、トルコとの緊張関係の末、キプロス紛争(1955-75年)でF-4を出撃させ両国で空中戦が勃発した歴史も背負ってきた。 今回訪れたHellenic Air Force Museumでは、その歴史故、希少価値のある航空機をはじめ、他のNATO諸国では見れない多種多様な米国製航空機を見学することができる。
厳重な警備
見学には事前の準備を
海外からの見学は、できれば事前の訪問日などを伝えて入館の許可をもらったメールのコピーなど持参したほうが安心で確実である。 基地のゲートにて所定の書類に必要事項を記載し、入館証と引き換えに旅券(パスポート)をゲートにて預ける事になる。
ゲートから博物館の事務所に連絡が入り、迎えの車で基地内を移動するのが一般的な見学の手続きとなる。 団体(10名以上)での申込では博物館内ツアーはあるものの、個人で入場する場合、見学に前には広報担当官から見学時の注意、順路の説明、野外展示場での航空写真撮影の注意、緊急の場合の連絡の方法などが説明され、その後、博物館の見取り図とギリシャ空軍の活躍を収めたプロモーション用のDVDを訪問の記念としてもらえる。
「航空考古学」の見地から育まれるコレクション
ギリシャの航空の歴史を後世に伝えるために航空機の修復に限らず、文献等の収集も含め1986年に「博物館組織局」が編成され、1990年には「博物館設立局」としてギリシャ空軍の広報部の中に組み込まれた。 2年後の1992年7月にはDekeleia空軍基地内にギリシャ空軍が所管する航空博物館としてオープンし、今日に至っている。 周辺国の航空博物館と異なる部分は、「航空考古学」という見地から第二次世界大戦で運用された航空機を中心に修繕と修復を施し、軍と民間部門が協力して航空機をコレクションしていることも特筆しておきたい。
高度な技術で修復された航空機群
順路に従ってメインハンガーから見学を開始する。 ハンガーの大きさとしては学校の体育館を2倍にした広さがあり、1940年から1970年代までの航空機が整然と翼を休めている。その中で目に留まるのが北朝鮮の国章のついたMiG-15 Fagotが展示されていることである。 このMiG-15はポーランド製のLim-2 Rbisであり、以前はオランダ王国軍事博物館で展示されていた機体であったが、交流の多いオランダより譲り受け、ここギリシャで展示されることになった珍しい機体である。
ポリッシュ使用に磨き上げられた北朝鮮塗装の機体は、ソビエト(現ロシア)のYeygeni Pepelyiaev大佐が自主的に朝鮮戦争に参戦した当時のカラーリングが施され、同大佐が操る愛機で連合軍に属する23機の航空機を撃墜した第二次世界大戦後の卓越したパイロットの一人であった。 また、同じハンガー内には、米国、タイ、フランスなどで数機しか現存していないCurtiss Helldiver SB2C-5が展示されている。この機体は1947-1949までギリシャ空軍の336SQに所属していた機体であり、修復に8年の歳月を費やし展示されている希少価値の高い機体である。
日本でもお馴染みの航空機
メインハンガーから直接アクセスできる、野外展示には1960から1990年代の航空機が展示されている。 Mirage F-1, A7-E Corsair, RF4-E Phantom, TF-102 Delta Dagger, F-5A Freedam Fighter, F-104G StarfighterそしてCanadair CL-13 Mk2(F-86E) Saberの機体がずらりと並ぶ。 特に2017年5月に退役したMcDonnell Dauglas RF-4E(シリアル番号69-7487)は30周年記念塗装を施した機体である。 当時、ギリシャ空軍ではRF-84の後継機としてF-4を1969年より導入し、防衛と偵察任務に就かせる一方、不足する機体についてはドイツ空軍から購入し運用してきた経緯がある。
また、日本では見ることができない1956年から運用を開始したConvair TF-102が展示されている。この55−4035はPratt & Whitney 社製 J57-P-23 ターボジェットを装備し、アビオニクス練習機としてコックピットはサイドバイサイド配置であり、総計で111機が生産された機体であった。
エプロンフィールドは東京ドーム1個分位の広さに30機ほどの航空機が展示されている。ここは実戦配備された航空機の運用も行っており、写真撮影に特に規制はないが、広報部の隊員が同行しての撮影となることは知っておいていただきたい。
夏場の撮影は気温も高く、あまりお勧めはできないが、他のNATO加盟国と異なった航空機が見学でき、またその用途も海に囲まれている関係でより興味深い航空機を見学することが出来るのが魅力の一つでもある。アテネ市内からも一般電車で簡単にアクセスできる立地環境でもあり、一度は訪れていただきたい航空博物館である。
訪問のための一般情報
Hellenic Air Force Museum
1. 住所: HAF Museum, Dekelia Air Base, 13671, Tatoi
2. 電話: +30 210 8195254, +30 210 8195255
3. E-mail: museum@haf.gr
4. 訪問について:毎土曜と日曜のみ 夏場:10:00−18:00 冬場:10:00−16:00
5. 入場料:無料
外国人については旅券(パスポート)を必ず持参のこと。ゲートにて記帳と旅券(パスポート)は一時的に預けることになる。(退館時に
返却される)
6. 交通アクセスについて
アテネ駅から各駅停車の列車で約60分、 DEKELIA駅にて下車、駅から50m(徒歩1-2分)で基地ゲートに到着できる。
◽️掲載誌:月刊航空情報 2019年10月号 / せきれい社

General information for visits
Hellenic Air Force Museum
1. Address: HAF Museum, Dekelia Air Base, 13671, Tatoi
2. Phone: +30 210 8195254, +30 210 8195255
3. E-mail: museum@haf.gr
4. About visits: Every Saturday and Sunday only Summer: 10: 00-18: 00 Winter: 10: 00-16: 00
5. Admission: Free
For foreigners, be sure to bring your passport. Bookkeeping and passports will be temporarily deposited at the gate.
(At the time of leaving will be returned)
6. About traffic access
About 60 minutes by train from Athens station, get off at DEKELIA station, and you can reach the base gate in 50m (1-2
minutes on foot) from the station.
◽️ Published Magazine: Monthly Aireview October 2019 / Sequireysha Ltd.
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