Gatwick Aviation Museum, Charlwood United Kingdom
英国のゲートウエイとしてロンドン・ヒースロー空港と2分しているガトウィック空港は、ロンドン市内から南へ約46kmに位置する国際空港であり、世界最繁の単線滑走路を有する空港としても知られている。この空港の名称は19世紀まで同地にあった「荘園」の名に由来し、1890年には競馬場に作り変えられ、その一角に飛行が建設された歴史を持っている。
この度、訪問するガトウィック航空博物館には、空港に隣接する一角に展示施設があり、Avro、Hawker、Gloster、De Havilland、English Electric、Blackburn、Percivalなど、第二次世界大戦の終わりから1970年代までの英国製航空機が展示されている。今月号では日本ではお目にかかれない、冷戦時代に製造された50年代、60年代の英国製航空機を中心に紹介をしていく。
刷新された展示機体
ガトウィック航空博物館は地元の実業家ピーター・ヴァランス(Peter Vallance)による個人コレクションとして1987年に開設され、英国における航空史の「歴史認識」を広く一般の方々に提供することを目的として開館された。ここに展示されている航空機は11機。エンジン展示はロールス・ロイスマリ-ンエンジンを始め実に25基が展示され、500を超える航空機モデルがコレクションされている。2013年にピーター・ヴァランスが亡くなった後、博物の拡張と展示機体修繕のため一時閉館されたが、2016年4月に再オープンとなった。特筆すべきは、そしてここに所蔵されているアブロ・シャクルトン (Avro Shackleton) 、ブラックバーンバッカニア(Blackburn Buccaneer) S1とイングリッシュ・エレクトリックライトニング(English Electric Lightning) F.53など「冷戦時代」に製造された3機の航空機がエンジンを含め稼働可能状態となって展示された事である。
必見、冷戦時の英国航空機
第二次世界大戦後、英国には大小の航空機メーカーが乱立していた。1940年代後半からは各航空機メーカーはジェット機の開発に着手するが、新型航空機の開発や生産量では米国の後塵を拝する事態となり、また、英国の植民地の独立も重なり、輸出も多く見込めない国際情勢も背景として新型機の開発は英国独自の運用に合わせた設計がされたことも書き加えておきたい。それではこの博物で戦後から冷戦時代に開発、運用された特徴のある航空機を紹介していく。
長距離洋上哨戒機として生産された本機は、アブロ・ランカスター爆撃機の設計を任されたロイ・チャドウィックによりアブロ・ランカスター「タイプ696」として開発され、1949年3月9日に初飛行し、1951年4月に英国空軍、そして1953年には南アフリカ空軍で採用が決定された。本機体にはロールス・ロイスが爆撃機用に開発した直径4mの二重反転プロペラを駆動する独特な構造を持ったグリフォン(Griffon)エンジンが搭載され、1956年7月26日から始まる第二次中東戦争(スエズ危機)で運用が開始された。設計段階では、空気抵抗の減少やプロペラ効率の向上と垂直尾翼の小型化が可能となる利点も多かったが、実用面では、燃費が悪く、また二重反転プロペラから繰り出される騒音にも搭乗クルーは悩まされる結果となり、1969年にホーカー・シドレーニムロッドが登場するとその活躍の場はなくなった。空軍に採用された1951年から58年までの7年間で185機が生産されたが、現存、南アフリカを含め保存されている機体は13機と言われている。
ブラックバーンバッカニア(Blackburn Buccaneer)
低空侵攻攻撃機としてブラックバーン・エアクラフト社による開発構想は1950年代初期であり、バッカニアの初飛行は8年後の1958年4月30日であった。1960年にブラックバーン社はホーカー・シドレー社に吸収されたが、生産はそのまま継続され、1962年から英海軍により運用が開始された。同機は低空での運動性を上げるため、翼面荷重と翼幅荷重を高く(主翼の縮小化)する必要があったが、航空母艦での運用翼面荷重と翼幅荷重を低く(主翼の大型化)すると言う運用上の二律背反を背負うことになる。これを解決するため、「吹き出し式フラップ」が採用され、また水平尾翼にも改良が加えられ、着艦時の失速を防ぐよう設計された。海軍での俊敏な運動性と高い機体強度を兼ねた全天候能力を備えた同機はその後、キャンベラ爆撃機の後継機として英空軍でも採用された。また、バッカニアの開発技術は、次世代の対地攻撃機体として欧州にて共同開発されたトーネード(Tornaldo)にもその技術が継承されている。
ホーカー・シーホーク(Hawker Sea Hawk)
当初は陸上戦闘機としてホーカー社で開発が進み、1947年9月2日に初飛行し、1953年から海軍に配備された。単発エンジンのシンプルなレイアウトの本機は胴体後部を燃料タンクに充てることができ、爆弾やロケット弾、増槽の追加装備などが可能であり、最終的には艦上戦闘攻撃機として運用された。また、操縦のし易さと多目的な作戦での使い勝手も良いことから、1950年代後半よりオランダ海軍、インド海軍、そしてドイツ海軍にも輸出され、生産機数は542機となった。英国海軍の主力艦上戦闘機としては、1956年10月から始まる第二次中東戦争でも活躍し、またインド海軍では第三次印パ戦争で実戦投入され、1984年まで現役で活躍した。
英国初の超音速戦闘機となった同機は、電機メーカーであったイングリッシュ・エレクトリック社が、1954年に原型機を送り出した戦闘機であった。機体の特徴としては後にも先にも2基のジェットエンジンを上下2段に重ねるという独創的な機体形状であった。特に縦に細長いボディに鋭い後退角を持つ主翼、機首の空気取り入れ口にレドーム(レーダーアンテナのカバー)を兼ねた衝撃波コーンを設け、空力的にも当時の戦闘機の中では群を抜いて優れており、マッハ2.0の速度を持ち運動性も良好であったことから、防空戦闘機として英空軍のパイロットからの信望は大きかった。反面、特異な形状により点検整備や部品の交換作業の工程が煩雑となり整備にかかる時間が増し、致命的な欠点として胴体内に燃料タンクを設けるスペースがなく、航続力が短く、また兵器搭載量にも乏しいという戦闘機としての有効性の是非が常に付きまとうことになる。運用過程として1960年12月14日より英国空軍第56飛行隊より配備が始まり、1968年からはサウジアラビア空軍にも輸出され、以降20年間にわたり防空戦闘機として202機が生産され、英国航空史に名を残した航空機であった。60年代以降、英国は財政難から戦闘機の独自開発には消極的になり、通常型ジェット戦闘機ではこのライトニングが最後の純国産機となった。
本誌では全ての展示航空機を紹介することはできないが、ガトウィック空港からのアクセスも良く、新型コロナの感染が収束した後、英国で開催される航空祭と一緒に読者の皆さんには訪れてほしい航空博物館である。
訪問のための一般情報
営業時間
夏の営業時間(4月〜10月) 金・土・日09:30〜17:00
冬の営業時間(11月〜3月) 金・土・日09:30〜16:00 **最終入場は閉館の1時間前まで
入場料 大人£7.50 子供(5-14)£2.505 (2021年2月現在) EMAIL ADDRESS office@gatwick-aviation-museum.co.uk
Web sight https://www.gamc.org.uk/
連絡先:01293 862417
住所: Gatwick Aviation Museum Vallance By-Ways Lowfield Heath Road Charlwood Surrey RH6 0BT
アクセス
タクシーはガトウィック空港鉄道駅から利用可能。片道£8
レンタカー利用の場合は、チャールウッドビレッジの標識が見えるまで、A23をガトウィック方面に進む。衛星ナビゲーションの場合、郵便番号はRH60BTを入力の事
◽️月刊航空情報 2021年5月号 / せきれい社
General information for visits
business hours
Summer Business Hours (April-October) Friday, Saturday and Sunday 09: 30-17: 00
Winter business hours (November-March) Friday, Saturday, Sunday 09: 30-16: 00 ** Last admission is 1 hour before closing
Admission Adults £ 7.50 Children (5-14) £ 2.505 (as of February 2021)
EMAIL ADDRESS office@gatwick-aviation-museum.co.uk
Web sight https://www.gamc.org.uk/
Contact: 01293 862417
Address: Gatwick Aviation Museum Vallance By-Ways Lowfield Heath Road Charlwood Surrey RH6 0BT
access
Taxis are available from Gatwick Airport Railway Station. One way £ 8
If renting a car, continue on A23 towards Gatwick until you see the Charlwood Village sign. For satellite navigation, enter RH60BT as the zip code
◽️ Published Monthly Aireview May 2021 / Sequireysha Ltd.
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