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Farnborough International Air Show 2022, United Kingdom

第51回ファンボロー・インターナショナル・エアショー(Farnborough International Airshow)は2022年7月18日(月)から7月22日(金)まで、イギリスのハンプシャー州に立地するファンボロー空港を会場に開催された。2020年は新型コロナウイルスの影響で中止されており、2年に1度、パリ航空ショーと交互に開催されている世界最大規模の航空宇宙ショーは、実に4年ぶりの開催となった。


プレゼンスを肌で感じるボーイング社vsエアバス社

アフターコロナで見込まれる航空需要を取り込もうと48カ国、1500の出展会社が一堂に会した今年の航空ショーでは、BAEシステムズ、ロッキードマーチン、ボーイング、ロールスロイス、エアバス、レイセオン・テクノロジーズなど、航空・宇宙業界のトップ企業が参加した。展示会では航空・宇宙、防衛産業等をカバーし、期間中は(1)宇宙技術の活用(2)防衛の戦略的意思決定のあり方(3)航空宇宙業界の持続可能性の探求(4)将来における労働力、(5)航空宇宙防衛の未来を切り開く(6)未来の交通手段を主なテーマとしたセミナーの開催や多くの意見交換の場が設けられた。

また、ビジネスデーの展示飛行では、エアバス、ボーイングそしてエンブラエルに代表される民間機やロッキードマーチン、ユーロファイターなどの軍用機の飛行をはじめ、イギリス空軍「レッドアローズ」がオープニング初日の飛行に華を添えた。また、BEAシステムズが2035年の就航を目指す次世代戦闘機「テンペスト」の初となる機体の一部を展示し大きな話題を呼んだ。 持続可能性を追求するボーイング社 屋外展示場でも各社が競って熱い商戦を繰り広げた。特に大型民間機の中で一番手の展示飛行を披露した次世代大型機777XシリーズのB777-9 (N779XW)旅客機。今年の4月には777Xの引き渡し時期を2025年まで延期を発表したが、延期によってより時間をかけた認証手続きを進め、777Xが持つ経済性と持続可能性をさらに追求する発表がされた後の大事な展示飛行であった。 B777の後継機となる777Xシリーズの内、最初に開発が始まったB777-9は、全長が76.72m(B777/73.9m)でまた、主翼が折りたたみができる構造となっており、B777が乗り入れている空港にそのまま就航できるように工夫されている。 そのため全幅では71.75mとなるが、折りたたみ後は64.82mと現B777と同じ長さとなる。 また、海外初公開となB737-10(737 MAX 10)の展示飛行が初日の午後から開催された。燃費効率の良い新型機の調達が進む航空業界にあって、当日のロンドン近郊は熱波で外出危険情報が出されていたにもかかわらず、多くの関係者が展示フィールドで華麗で力強い飛行に魅了された。 日本の航空会社では、全日本空輸が777Xの導入を発表。また現行のB737-800の後継機としてB737-8(737 MAX 8)の発注を促す旨の会見が期間中に開催された。 航空需要増大を目論むエアバス社 エアバス社は、航空ショー開会に先立ち、アフターコロナの2023年から2025年かけて航空需要がコロナ前を上回ると発表している。これに呼応するかのようにデルタ航空は、期間中にエアバスA220-300を12機追加発注することを発表した。この追加発注により、米国の航空会社のA220の発注機数は合計107機となり、その内訳は、100型が45機、300型が62機となった。 また、英イージージェットは、A320neoファミリー航空機56機の発注を決定。この発注は、英イージージェットの航空機の新旧更新とコストおよびサステナビリティの強化の一環として注目を浴びた。また、この契約には、18機のA320neoからより大型のA321neoモデルへのアップサイジングが含まれている旨の発表も同時に行われた。 中距離路線の覇者、エンブラエル社 小型ジェット旅客機E-Jetとして世界のスタンダードとなったエンブラエル社では、中距離路線アラスカ航空グループであるホライゾン航空から期間中にエンブラエル175型機を8機追加受注を発表した。ホライゾン航空は現在、ボンバルディアQ400を31機、エンブラエル175型機を30機の計61機運航しているが、2022年の初頭には、エンブラエル175型機に機材を統一する意向を示しており、今回の発注により、2026年までにエンブラエル175型機を50機体制に拡大することになる。 次世代戦闘機「テンペスト」の可能性 開催期間中、軍用機部門で1番の話題をさらったのが、英国BAE (British Aerospace)システムズが開発をおこなっている次世代戦闘機「テンペスト」の前部胴体を公開したことである。同機は2035年の就役を目指す次世代戦闘機でり、英独伊西の欧州4カ国が共同開発した戦闘機「ユーロファイター タイフーン」の後継機 として2018年から開発がスタートしている。ファンボロー航空ショーの開会に先立って英国のベン・ウォレス国防大臣は、今後5年以内に実証機の飛行を予定していることも明らかにしている。 日本との関係も強化 「テンペスト」は、開発の中核となっている英国防省、BAE、レオナルド、MBDA、ロールス・ロイスで構成する「チーム・テンペスト」により現在開発が進めている。BAEは、新しいデジタルエンジニアリング技術を活用し、現在に至るまで設計、試験、評価、製造プロセスを主導している。 また、BAEはこの1月から日本に新会社「BAE Systems Japan 合同会社」を設立し、日本の産業界と包括的に協力するほか、防衛省や自衛隊との関係強化を目指している。ちなみに日本におけるBAEの技術協力の実績としては、陸上自衛隊に水陸両用車、航空自衛隊用に電子戦システムやアビオニクスなどを提供している。また、米ロッキード・マーチンのF-35「ライトニングII」プログラムの主要パートナーとして参画しており、将来的には、アビオニクス系に熟知した日本人専門家を揃え、さらに日本の防衛システムに深く参画していく意図が感じられる。開催期間中の「テンペスト」展示ブースには日本語通訳も用意し、日本を意識した販売体制を充実させていた。 日本の航空宇宙産業の課題 コロナパンデミック以前の2018年に開催されたファンボロー航空ショーでは、三菱航空機が開発を進める国産リージョナルジェット“MRJ”が展示され話題となったが、その後、計画は凍結され今回、日本企業は航空機の軽量化素材や部品、一部防衛装備などの合同スペースでの出展に留まった。 日本の航空機産業は、国の基幹産業と位置付けている米国や欧州、そしてブラジルに比べ、日本では基幹産業化に向けた支援や関与の度合いが国際的に見ると強くないため、産業規模拡大に至っていないという点が長年指摘されている。これからの日本企業の活動にも注視しながら、やはり欧米の大手航空機メーカーが「環境」に配慮した航空技術をどのように具現化していくのか、次回の開催が楽しみである。


⬜️掲載誌:月刊航空情報 2022年10月号/せきれい社



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