de Havilland Aircraft Museum,London Colney United Kingdom

ロンドンの北21 kmにある駅、ポッターズバー(Potters Bar)。英国のハートフォードシャー州ロンドンコルニーにある駅で、牧歌的な風景が広がる町の郊外には、デ・ハビランド航空博物館(旧デ・ハビランド航空機ヘリテージセンター)がある。1959年5月15日に英国初の航空博物館として開設され、一般公開されたこの航空博物館は、往年のデ・ハビランド社の航空機が展示されている。今月号では、2020年2月に新しい展示ハンガーも完成し、展示内容が刷新された同博物館を紹介する。


伝統の系譜

英国の航空機のパイオニアであり数々の名機を製作したサー・ジェフリー・デ・ハビランド(Sir Geoffrey de Havilland)。 1920年にデ・ハビランド・エアクラフト(de Havilland Aircraft)社を創設し、小型自家用機時代の先駆けとして製作したDH60モス(Moth)をはじめ大戦中には木製の機体で製造されたDH98モスキート(Mosquito)爆撃・偵察機や戦後は世界最初のジェット旅客機DH-106 COMMET(コメット)、そしてバンパイア(Vampire)をはじめとするジェット戦闘機を世の中に送り出した。後にデ・ハビランド・エアクラフト社は ホーカー・シドレー(Hawker Siddeley)社を経て ブリテッシュ・アエロスペース(BAe)社、さらに国防産業を擁するBAEシステムズ社と変遷を重ねた。一方、1928年にはカナダの飛行士訓練用のモス機を製造するために子会社としてデ・ハビランド・カナダ(de Havilland Canada)社をトロントに設立したが、カナダ政府は1980年代にこの会社を国有化し、ボーイング(Boeing)社へ売却。その後1992年にボンバルディア・エアロスペースに買収され、デ・ハビランド・カナダが最後に開発した機種であるDHC-8ついては,短中距離旅客機Q400型として現在も生産が継続されている。


「木の驚異(The Wooden Wonder)」

と呼ばれたモスキート爆撃機

開館から12年が経過した1971年初頭から博物館の敷地も拡大され、展示機にモスキート(Mosquito)爆撃機がリバプール・コーポレーションから寄贈された。その由縁で70年代に一時的であるが「モスキート航空博物館(Mosquito Aircraft Museum)」と改名したが、1977年、博物館運営のためにデ・ハビランド航空博物館トラスト・リミテッドが設立され、現在の名前に戻った経緯がある。

さて、往年の映画ファンの間では、1964年に公開されたジョージ・チャキリス主演の「633爆撃隊」や1969年に制作されたデヴィッド・マッカラム主演の「モスキート爆撃隊」を通じて第二次世界大戦中に活躍したDH.98 モスキートを初めて認識された方も多いと思う。第二次世界大戦中の英国は物資、特にアルミニューム、鉄が不足していた。そこで注目されたのが木材に活用であった。木材は機体構造では表面を平滑にできるため空気抵抗は金属製よりも優れているといった副次的なメリットと、また家具業界の資源と、デ・ハビランド社の技術力を結集したこの航空機は、1940年11月25日に初飛行している。モスキートはロールスロイスマーリンV型12気筒駅鈴レシプロエンジンを両翼に1基ずつ搭載した双発機であり、コクピットには操縦士と航法士が並んで座る並列複座機であった。エンジンやプロペラなどを除けば、燃料タンクを含めてほとんどの部位に木材を使った構造で高度8,535 m 時に最大速度667.9 km/hという戦闘機としても申し分のない高性能を示し、その用途は戦闘、爆撃、写真偵察そして貨客型など多岐にわたった。


双ブームジェット戦闘機の起源

DH.100バンパイア

バンパイアの原型機はグロスターミーテイアの初飛行から遅れること半年、1943年9月20日に初飛行に成功した戦闘機であった。モスキート爆撃機の製造で培った経験を生かして、木製合板を操縦席周辺に構成する素材として使用し、直線翼の付け根にエアインテイクを配置し、主翼中央部から垂直尾翼を備えたテイルブームを伸ばし、左右を水平尾翼で結合した双胴型である世界でも珍しい航空機であった。同機は1947年4月より英国国内で迎撃機として配備されたが、元来燃料搭載量が少なく航続距離が短いと指摘され、多くの改良型が製造された。

また、バンパイアは軽量で取り扱いもしやすく、プロペラ機からの機種転換も比較的容易であったため、英国以外ではオーストラリア、イタリア、スイス、フランス、インドなどでライセンス生産がされ、バンパイア各形式を合わせて3,200機以上が生産され、1990年スイス空軍が保有するバンパイアの退役によってその全てが引退した。日本では、1950年代後半に富士重工がT-1練習機(初鷹)の研究と調査用にバンパイアT.55を1機購入し、2021年まで航空自衛隊浜松広報館にて展示されていた。


世界初のジェット旅客機

DH106 COMET

デ・ハビランド社は戦後の大量輸送時代と海外植民地への航空輸送路の確保に備え、1943年以降チャーチル政権の下で旅客機案がまとめられた結果、「ジェット旅客機」という新ジャンルに挑むことになる。

COMET(コメット)試作機は1949年7月27日に世界初のジェット旅客機として初飛行に成功した。当時、アメリカでは巡航速度500km/h台のレシプロ機、ダグラスDC-7やロッキードコンストレーションに比べコメットの実用化は他の追従をさせない独走状態であり、1952年5月2日に英国海外航空(BOAC)が初の商用運行としてヒースローからヨハネスブルグ(途中、ローマ、カイロ、ハルツーム、エンテベ、リビングストン経由)間で実施され所要時間を半減させた。

その後も日本線、シンガポール線となどの長距離路線にも就航し、また植民地訪問にもコメットは頻繁に利用され英国航空業界の威信を内外に誇示した。

しかし、1954年以降2度にわたる乗員乗客全員死亡という空中分解による墜落事故を引き起こし、コメットは耐空証明を取り消され、全機が運行停止処分となった。

事故の徹底検証と改良と技術向上も伴い、コメットは10年という歳月をかけて再就航にこぎつけるが、1954年末にはボーイング707、その後就役したダグラスDC-8などがコメットの空白時代に順次就航を果たし、コメットはそのリード権を失い、1964年末に112機を持って生産を中止した。


館内ではボランテイアで整備に携わっているスタッフから、機体の説明や構造の解説に至るまで細かく解説してくれ、その機体の生い立ちや逸話話まで聞けることもこの博物館の魅力の一つでもある。 ロンドン市内からは小一時間でアクセス可能であり、英国の航空史を学ぶ上で半日時間を作ってでも是非立ち寄って欲しい航空博物館である。



<訪問のためのインフォメーション>


de Havilland Aircraft Museum

London Colney,

United Kingdom


所在地 :Salisbury Hall

London Colney AL2 1BU

Webサイト :www.dehavillandmuseum.co.uk


開館時間   :開館期 3月の第1日曜日から10月最後の日曜日まで

曜日 / 火曜、木曜、土曜、日曜日 10:30−17:00

          (最終入場は16:00まで)

          休館 / 月曜・Bank Holiday

         

入場料 :大人£14 / 子供£8(5歳-16歳)

          (2022年7月現在)


アクセス :ロンドン市内キングスクロス(Kings Cross)駅から列車でポッターズバー(Potters Bar)駅まで約20分 

ポッターズバー駅からはタクシーを利用して10-12分程で博物館へ到着できる。

(駅に到着したらタクシー事務所の受付にて車を呼ぶシステム。流しのタクシーや日本のように駅前に常時停車していないので注意が要)

尚、タクシー代金片道£16/帰りは博物館でタクシーを呼んでくれる。

(注意)ポッターズバー(Potters Bar)駅からバス(約20分)で博物館近くまで行けるがバス停から10分程徒歩となる。特に日曜日はバスの運行は少ないので注意が必要。


◻️掲載誌:月刊航空情報 2022年11月号/せきれい社


Information for your visit


de Havilland Aircraft Museum

London Colney,

London Colney, Colney, United Kingdom


Location : Salisbury Hall

London Colney AL2 1BU

Web site : www.dehavillandmuseum.co.uk


Hours : Open from the first Sunday in March to the last Sunday in October

Days of the week / Tuesday, Thursday, Saturday, Sunday 10:30-17:00 (Last admission by 16:00)

      Closed on Mondays and Bank Holiday

         

Admission : Adults £14 / Children £8 (5-16 years)

          (as of July 2022)


Access: 20 minutes by train from Kings Cross station in London to Potters Bar station. 

From Potters Bar station, a 10-12 minute cab ride will take you to the museum.

(When you arrive at the station, you can call for a car at the cab office reception desk. (Please note that cabs do not always stop in front of the station as they do in Japan.)

Cab fare is £16 one way, and the museum will call a cab for you on the way back.

(Note: You can take a bus from Potters Bar station (20 minutes) to the museum, but it is a 10-minute walk from the bus stop. Be careful, especially on Sundays, as buses are not frequent.


◻Published Magazine: Monthly Aireview November 2022/ Sequirey-sha co. Ltd



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