COVID-19 Follow-up Report, About the Aviation Industry Business Situation in Europe
3月の新型コロナ(COVID-19)の感染拡大から2ヶ月半が経過しようとしている欧州航空業界では長期にわたる運休により、その経営が緊迫度を増してきている。各航空会社は事業環境の正常化には夏以降も時間がかかると判断し、新規航空機の発注見直し、また既存航空機の売却や人員削減、政府からの融資などにあらゆる手を尽くしているが、先が見通せないビジネス環境なかで事業構造の抜本的な見直しも迫られている。
発着枠規制を一時停止
「発着枠を維持するために飛ばすしかない」。欧州各航空会社から悲痛な訴えを改善するため、3月10日にEU(欧州連合)は発着枠使用義務の一時停止措置を実施した。 従来発着枠の80%を使用しなかった航空会社は次回の割当て権利を失うという厳しい基準が欧州各航空会社に設けられている。COVID-19の深刻な影響を受け需要減による収益悪化に苦しむ航空会社に対して、発着枠の確保だけで乗客を乗せずに運航する「ゴーストフライト」をなくし、収益の圧迫を軽減する目的でこの基準を6月まで停止することとなった。
経営が緊迫する欧州航空各社
EU(欧州連合)はこの4月から6月までの間の乗客数は前年(2019年)の対比で99%減となる中間見通しを発表した。欧州でのメガキャリーであるエールフランス・KLMは4月24日にフランス政府の保証を得て70億ユーロの借り入れを発表。また、一時は経営破綻の噂も流れ、資金調達交渉が難航していたルフトハンザ・ドイツ航空(LH)とドイツ政府の交渉が4月上旬にまとまり、政府が約90億ユーロ相当の支援を行うことで合意に辿り着いたとの報道があった。 その一方では英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は28日、最大1万2000人の削減を検討すると表明し、北欧大手スカンジナビア航空(SAS)も従業員5000人を削減する計画や、欧州LCCのパイオニアであるライアンエアーも3000人の人員削減に手を付けざるを得なくなった。
新型コロナの蔓延により航空会社各社は乗務員や地上職員などの人件費、機材リース料などの「固定費」が経営の圧迫に拍車をかけており、今後の欧州域内の感染状況をにらみながら経済活動を再開する動きがある一方、長期戦に備える準備も始めている。
機材の有効利用と貨物便へのシフト
旅客航空便の減少の中、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)やエールフランス・KLMでは旅客便に貨物を搭載し運航をこの4月上旬から開始した。本誌5月号でもお知らせしたKLM保有のB747が新型コロナの影響により一年前倒しで運航停止になったことをお伝えしたが、オランダ・フィリップ社からの要請で、中国向けに医療物資を輸送するため、最大90日間に渡って旅客便(B747)2機に医療貨物を搭載し運航を始めた。これに伴い同社B777も韓国向けに緊急医療物資の輸送を始めている。 旅客事業が低迷している中で、機材の有効利用の先駆けとして、欧州各社が貨物輸送の取り組みをはじめ、明るい話題を提供している。しかし、人の行動制限は未だ厳しく管理され、航空貨物便の運航停止をしている航空会社もあり、その需要が急激に増大しているFedEX Express Europe(本社:オランダ)では要員確保の問題も浮き彫りになっている。欧州各国では労働や移動に関する規制が取れていない状況において倉庫内のマンパワー、配送業務のマンパワーが十二分に確保できる状況ではなく、航空貨物運送状1件あたり100kgを超える貨物のみの受託制限や配送にかかわる遅延についての理解を促しているのが現状でもある。
欧州各国共に新型コロナに対する出口戦略がはっきりしない状況の中、オランダのテレビ番組では、一時的に自粛が解除されても有効的な「ワクチン」が開発されない限り、視聴者からは航空機、列車など公共の交通機関を利用して出張はしない。また、これから来る夏のバケーションでも航空機を使った移動は控えると言った回答が80%以上であり、この数字は深刻に受け止めていかなくてはならない。航空需要が少なくとも前年(2019年)の水準まで回復するまでには数年かかるという見解もあり、航空業界の危機対応は長期戦を強いられる見通しである。
◽️掲載誌:月刊エアライン 2020年8月号 / イカロス出版

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