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Canada Aviation & Space Museum, Ottawa Canada

今月号で紹介するカナダ航空宇宙博物館は、首都オタワ郊外に立地する元カナダ空軍基地跡に建つ国内最大規模の航空博物館である。広大な格納庫の中には、飛行機の黎明期を現代に伝えるレトロな飛行機から、水上機やヘリコプター、そして現在カナダ空軍で使用されている戦闘機、エンジンや宇宙に関わる機器など130にも及ぶ展示がされ、航空機ファンのみならず、家族連れでの人気スポットになっている。


新国立航空博物館の誕生

カナダ航空 & 宇宙博物館は、元カナダ空軍基地(RCAFロッククリフ)と国立航空博物館、カナダ戦争博物館でそれぞれが保有していた「歴史的航空遺物」を1964年に統合し、「新国立航空博物館」としてスタートした。統合前の1988年までは第二次世界大戦時の木造格納庫で機体が保管・展示され、その一部は屋外でも展示をしていた。2006年以降民間企業による基地跡の再開発が始まり、自然を残した公園の整備とすべての航空機が室内で展示できる近代的な航空博物館の建設が始まり、2010年のリニューアルオープンでは施設と名称が一新され、カフェやギフトショップも開設されている。

この博物館で魅力的な航空機のひとつとして1958年、カナダ空軍のボランティアによって作られたシルバーダート(Silver Dart)のレプリカが入り口に展示されている。オリジナルは1909年にカナダで空を飛んだ最初の動力付き航空機であり、カナダにおける航空機の歴史の最初の1ページを飾る貴重な航空機である。また、1909年に史上初の固定翼航空機によるフランスからイギリス海峡を渡ったオリジナルのブレリオXIの同型機も貴重な「歴史的遺産」として展示されている。そのほかにもカナダを代表するジェット機、アブロ・カナダC102ジェット旅客機は、1949年に世界で2番目に飛行するジェット旅客機となったプロトタイプ航空機であり、現在では機首部分のみしか残されていないが、ここでしか見学できなく、見逃せない展示機体だ。

この博物館では、単に航空機の展示だけではなく、子供達を中心に20世紀初頭から現在の航空機の発展過程を学ぶ「ウオークウエイ・オブ・タイム」による学びの場や、カナダの宇宙機関が提供した宇宙ロボット工学の解説など興味深い「学習素材」の提供が充実している。また一方では、若い世代や家族連れにも楽しんでもらえるシミュレーターでの操縦体験も充実している。若者を中心の人気アクティビティーとして、ビンテージ複葉機に体験試乗できる「Vintage Biplane Experience」のメニューがあり、2人乗りプロペラ複葉機Waco UPF-7に搭乗し、自然豊かなオタワを上空から一望する絶景フライトの企画など、人を惹きつける「飽きさせない工夫」がされている。


首都防空基地RCAFロッククリフ

カナダ製の航空機シルバーダート(Silver Dart)の初飛行から9年後の1918年、オタワ周辺での航空郵便事業を可能にする飛行場建設計画が立案された。ロッククリフ公園内のオタワ川岸にある軍のライフル射撃場のフィールドが候補に上がり、滑走路に改造されロッククリフ飛行場として整備されたのがその始まりである。

2年後の1920年に開港したこの飛行場は、カナダの航空局がカナダ全土に開設した6つの飛行場のうちの1つであり、当時航空局が行った主な活動には、カナダの地形図作成のための軍事航空写真撮影、航空輸送、そして航空郵便などが中心であった。

1922年、航空局はカナダ軍に統合され、翌年には新設された国防省の一部となり、1924年にはカナダ空軍(RCAF)と改名された。こうして、この施設はRCAFボーデン(Borden/16th Wing)基地に次いで2番目に長く国の防空と関わりを持つ基地となった。その後、何度か名称が変わり、1936年にRCAFステーション・オタワとなったが、1940年には再びRCAFロッククリフに改称されている。

1939年には、第二次世界大戦の運用に備え、飛行場の滑走路は舗装された。大戦中は、イギリス連邦航空訓練計画にも参加し、首都の中心部に最も近い空軍基地として、B-17フライング・フォートレスやB-24リベレーターが配備され、また主要都市を結ぶ輸送業務の拠点となっていた。同時に軍の飛行試験や航空機開発の拠点としても重要な存在であった。 終戦直後の1945年9月28日には、同基地において、英国で開発された連合軍側初の実用ジェット戦闘機グロスター・ミーティア(Gloster Meteor)による試験飛行の基地としてその名を知らしめることになる。

しかし1957年、軍の主要な飛行試験・開発業務はRCAFステーション・アップランド(現在のオタワ・マクドナルド・カルティエ国際空港)に移され、以降その活動は縮小されていく。

1968年には3つの部隊がカナダ軍に統合された後、RCAFロッククリフ基地はカナダ軍ロッククリフ基地(CFBロッククリフ)と改称され、さらに1972年には、首都圏の国防総省の施設をCFBオタワに統合する一環として、CFBオタワ(ノース)と改名されている。

1991年、冷戦収束後の国防削減により、1994年以降ロッククリフでの軍事プレゼンスは終了し同基地は廃止されたが、2006年には、同基地を民間企業が開発し、現在はロッククリフ飛行クラブによって民間空港として運営されている。ここカナダ航空&宇宙博物館はロッククリフ空港に隣接し、空港は博物館のコレクションへの航空機の搬入にも使用されている。


かつて存在したカナダの航空機メーカー

現在カナダの航空機産業を牽引するボンバルディア・エアロスペースはビジネスジェットから中距離旅客機の製造など世界で活躍しているが、振り返って見てみると独特な航空機を製造していた航空機メーカーがカナダには存在していた。当博物館でも展示されている往年の航空機製造会社を紹介しておきたい。


アブロ カナダ(Avro Aircraft Canada)

第二次世界大戦中、英国は戦火にまみれ爆撃による工場の稼働率が落ち込んでいた。英連邦に属するカナダはドイツ軍の爆撃がなく、航空機の生産を安全にできる国として英国軍用機を生産するためにビクトリー・エアクラフト(Victory Aircraft)社が1942年にトロントの郊外に設立された。

大戦中は、戦略爆撃機アブロ・ランカスター(約430機)や軽輸送機アブロ・アンソン(約3.200機)などの生産により企業土台を強固にし、1945年には英国アブロ社の子会社としてアブロ カナダが設立。戦後は、カナダ空軍やトランス・カナダ(現:エア・カナダ)に向けた航空機の開発や製造を行なった。当博物館で展示されている全天候ジェット戦闘機CF-100カナックやC-102ジェットライナー(機首部分)、そして開発が中止された超音速デルタ翼迎撃機CF-105アローはアブロ カナダ製の機体である。

1962年には親会社である英国のアブロ社がホーカー・シドレー社に買収され

たが、1990年代に会社は解散している。


カナディア(Canadair)

第二次世界大戦終盤の1944年にモントリオール近郊に会社を設立。米国製PBY・カタリナ飛行艇、戦後はノースアメリカンF-86(CL-13)、ロッキードF-104(CL-90)、ノースロップF-5(CF-116)など、米国製航空機のライセンス生産を中心に躍進した。

1952年にはエレクトリック・ボートと合併しジェネラル・ダイナミクスとなったが、1953年にはジェネラル・ダイナミクスがコンベア社を買収したためカナディアはコンベア社の子会社となる。しかし、1986年にはボンバルディア

社に売却され、カナディア社は消滅し、現在はグループ企業のボンバルディア・エアロスペースとして航空機製造を継続している。



訪問時の一般情報:

カナダ航空宇宙博物館


住所: 11 Aviation Pkwy, Ottawa, ON K1K 2X5

電話:+1-613-991-3044

開館時間:09:00−17:00

閉館日:12月25日(*)

入場料:大人C$16.25 / 3歳-17歳C$11 (2023年3月現在)

オタワ 市内からから公共交通機関での利用も可能。オタワ 中央駅からはタクシー、またはウーバーの利用が便利。

(*)新型コロナの感染拡大で、会館日が流動的となっている為、訪問前に必ずHP上で確認のこと)


⬜️掲載誌:月刊航空情報 2023年6月号/せきれい社


General information about the visit:


Canada Aviation & Space Museum

Address: 11 Aviation Pkwy, Ottawa, ON K1K 2X5

Phone: +1-613-991-3044

Opening hours: 09:00-17:00

Closing day: December 25 (*)

Admission: Adults C$16.25 / 3-17 years old C$11 (as of March 2023)

Public transportation is available from within the city of Ottawa. Cabs or Uber are available from Ottawa Central Station.

(*) Due to the spread of the new coronas, the dates of the halls are in flux, so be sure to check the website before visiting.)


⬜️ Published Magazine: Monthly Aireview June 2023 / Sequirey-sha Ltd.



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