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Brooklands Museum, Weybridge United Kingdom

ブルックランズ博物館は、1907年に作られた英国最初のレーシングサーキット。現在は、かつてのブルックランズモーターレーシングトラックの一部を自動車および航空博物館として開放している。 二つの大戦を通し、この地は政府の指導により英航空機の生産拠点と変わり、数多くの航空機が製造された場所であったことはあまり知られていない。博物館内では、当時のクラブハウスなどが再現され、所蔵する航空機を中心にこの博物館の魅力をお伝えする。


輝かしいブルックランズの歴史


ブルックランズは、英国のモータースポーツと航空技術の発祥の地であり、20世紀の80年間を通じ、英国において多くの工学的・技術的成果を残した場所である。1907年6月、地元の地主であるヒュー・F・ロック・キングによってレーシングサーキットが世界に先駆けて造られ、同時期にはブルックランズは英国でも初となる飛行場のひとつとなり、英国航空史にその名を残している。

第一次世界大戦前には国内から「航空パイオニア」が集まり航空機創世記の基礎を作り、第二次世界大戦を通じて英国製航空機の設計・製造の中心地となった。1908年から1987年の間に実に260機種、約18,600機の航空機が製造されたことになる。

ここからは、時代毎にブルックランズでの航空機製造の歴史を見ていくとしよう。

<1914 - 1918: 第一次世界大戦>

一次大戦から航空機の開発と製造において重要な役割を担うこの地は、1915年にはビッカース(Vickers)社はブルックランズで航空機の製造を開始。軍との契約による航空機需要の高まりとともに、徐々に工場を拡張していく。ブルックランズで生産された最初のビッカース社製戦闘機は、航空機に機銃が搭載された英陸軍航空隊用の複葉機ガンバス(Gun Bus)F.B.5であった。続いて、1917年11月には長距離爆撃機である複葉双発のビミー(Vimy)が生産されている。

このビミーは、双発機の長距離特性を活かし無着陸大西洋横断飛行や英国からオーストラリア、そして南アフリカに向けての初飛行など「世界初の飛行記録」樹立に一躍を担い、「ブルックランズ 製航空機」がまさに世界の航空機製造界を席巻した時代でもあった。

ビッカース社と並んで、ソッピース・アビエーション・カンパニー(Sopwith Aviation Company)の製造数も圧倒的であった。多数の試作機のほか、1916年10月に運用が開始され、その後日本陸軍でもシベリア出兵時の作戦に使用された単座複葉戦闘機パップ(Pup)や1917年6月から運用が開始され、西部戦線で活躍した複葉戦闘機キャメル(Camel)、そして1918年から運用が開始された単座複葉戦闘機スナイプ(Snipe)7F.1などの航空機がキングストン近郊の生産ラインから運び込まれ、その全てがブルックランズでテスト飛行が行われた。これは西部戦線で制空権を獲得した航空機のほとんどがここブルックランズから巣立った事になる

<1939 - 1945: 第二次世界大戦>

1939年9月に二次大戦が始まると、火砲メーカーのアームストロング社(1846設立)と1927年に合併したビッカース社はビッカース・アームストロングと改称し、ホーカー・エアクラフト(Hawker Aircraft Limited)と共にブルックランズの敷地を軍用機生産のために独占使用することになった。1936年6月15日に初飛行に成功したビッカース・ウェリントンは二次大戦開戦当時、世界でも先進的な胴体、翼等の主要部分は金属の骨組みに布を張った構造(大圏構造)の爆撃機であった。この構造は、頑丈かつ軽量で多少の敵からの攻撃でも大きな破壊から免れることが出来るという利点があり、特に夜間爆撃において1940年代初頭の連合軍の攻勢を一身に背負う爆撃機でもあった。1943年までにビッカース・アームストロング社が製造した11,464機のウェリントンのうち、ブルックランズで製造されたのは2,515機で、生産総数の5分の1を占めた。

一方、ホーカー・エアクラフト社は、当時航空技術者の一人者であったシドニー・カム(Sydney Camm)によって1925年に航空機の溶接構造に代わる安価でシンプルな代替手段としてジョイントチューブを使用した金属構造を開発。この手法を取り入れ誕生したのがホーカー・ハリケーンである。1935年11月、ブルックランズで試作機として組み立てられ、初飛行に成功したが、翼や胴体は木材や帆布を多用し、前時代的といわざるを得ない旧式な構造であった。しかし、一方では軽くて頑丈でもあり、その余裕のある構造から戦局に伴う改良への適性が高く、また被弾時の機体や乗員のサバイバビリティにも優れており、レーダーから探知されにくいという副次的な効果を生んだ。

ブルックランズで生産されたハリケーンは3,012機で、総生産数の5分の1を占め、1940年夏のバトル・オブ・ブリテンの際、ハリケーンがこの決戦の主役となったのは、ブルックランズをはじめとする英国内工場での効率的な生産、そして空軍パイロットの技量によるものが大きかった。

その後、シドニー・カムは、ホーカータイフーン、ホーカーテンペストなど、第二次世界大戦で英国空軍の主力級となる航空機の設計に携わり、実に52種類の航空機の設計を担当し、合計18,900機が製造されている

<1945-現在>

ブルックランズが両大戦で英国の航空機産業に貢献し、戦後の1946年には、ビッカース(Vickers)は33万ポンド(当時の換算で3億5千万円程度)でこの地を購入し、民間航空機の生産の基礎を作った。中でも注目されたのが中距離路線で活躍したターボプロップ旅客機ビッカース・バイカント(Vickers Viscount)を445機製造している。また1959年にはバイカントの後継機として開発した中距離4発ターボプロップエンジン搭載のヴァンガード(Vanguard)のテスト飛行も行われ、1962年には、T字尾翼、尾部にエンジン4基を集中配備するプロトタイプのVC10の試験飛行もブルックランズで実施され、53機の生産型VC10もここで製造されている。

しかし、大戦後は軍需産業の需要が大きく後退し、航空機製造については国際協調の中、英国の航空機製造会社は「企業統合」の渦中となり、設計、製造に関わる部分が広域化・多国化していくことにより、1987年には工場は取り壊され、その後はビジネスパークや住宅地に姿を変えている。2006年にはメルセデス・ベンツの英国拠点「Mercedes-Benz World」もオープンし、かつての飛行場跡地に大型試乗コースが完成。

同敷地内で共有しているブルックランズ博物館では、2009年に世界に2基しかないコンコルドフライトシミュレータのうち1基がブリティッシュ・エアウェイズから寄贈され、見学者は元機長のレクチャー付きで操縦体験ができる施設が完成し、以来、訪問者の人気のアトラクションになっている。

 また、2017年11月13日には新施設としてケント公マイケル王子によって「ブルックランズ・エアクラフト・ファクトリー」の完成披露が執り行われた。

新建物内には、可能な限り当時の工場の雰囲気を再現することを目指した長さ54mに及ぶ「組み立てライン」があり、ブルックランズで製造された現存する唯一のウェリントン爆撃機や垂直離着陸実験機ホーカー・シドレーP.1127などが展示されている。

また中二階には、ハリケーンの設計者シドニー・カムのオフィスが再現されており、当時の机、椅子、製図板が置かれ、地元の学校教育の一環として技術の習得や工場での製造ラインの構造や機能などを学ぶことにも視点を置いた新しい展示施設となっている。


訪問を終えて

エアロスペース・ブリストル(航空情報4月号掲載)でも触れたが、英国の航空博物館や自動車博物館の役割は、大きく変わろうとしている。それは単に航空機やクラシックカーの展示だけではなく、学校向けに実践的な学習プログラムを提供し、科学技術の発展を支える「理系人材」を育てるSTEM(*)スキルを身につけさせ、工学分野のキャリアの可能性をこどもの時から発見してもらうことを目的とした取り組みである。科学技術開発の競争力向上という観点から教育政策や学校カリキュラムに組み込まれ、科学技術の発展を未来に繋げる活動として重要な役割を担っていく。そして長期的には労働力開発や安全保障、そして移民政策の促進にも繋がる施策として注目されている。日本でもこのような取り組みに注目し、人が集い、新しい技術が生まれ、そして地域の活性化に役立てて欲しいと願っている。

(*)STEM: STEM教育:Science, Technology, Engineering and Mathematicsの教育分野の総称



訪問のための一般情報


Brooklands Museum


所在地:Brooklands Drive, Weybridge, Surrey, KT13 0SL United Kingdom

連絡先:+44 1932 857381

開館時間:月曜-日曜/10:00-17:00

入館料 :大人£24.20(65歳以上£23.10) 子供£13.20(5歳-18歳)

(**上記入館料は2023年5月現在)

交通 :最寄りの鉄道駅はサウス ウェスタン鉄道ウェイブリッジ(Weybridge)駅で、駅からは徒歩20分。駅からブルックランズ ホテル停留所行きのバスを利用することも可能(バス停から徒歩 7 分)。


⬜️掲載誌:月刊航空情報8月号/2023年 せきれい社


General information for your visit


Brooklands Museum


Location: Brooklands Drive, Weybridge, Surrey, KT13 0SL United Kingdom

Contact: +44 1932 857381

e-mail: info@brooklandsmuseum.com

Opening hours: Monday - Sunday, 10:00-17:00

Admission: Adults £24.20 (65+ £23.10) Children £13.20 (5-18 years)

(**The above admission prices are current as of May 2023)

Transportation :The nearest train station is Weybridge on the South Western Railway, a 20-minute walk from the station. From the station, you can also take a bus to the Brooklands Hotel stop (7-minute walk from the bus stop).

Home Page:https://www.brooklandsmuseum.com/your-visit


⬜️ Published Magazine: Monthly Aireview August / 2023 by Sequirey-sha Co.Ltd

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