B & B Friendship Hoogerheide, The Netherlands
- 温かいおもてなしの宿 - 日本航空ジャーナリスト協会 「°天ニュース144号」寄稿文
F-27フレンドシップに宿泊
4月以降、新型コロナの感染症対策につきましてはマスクの着用にも自由度が加味されるようになり、今まで抑えられていた国内そして海外旅行にも出かける機会も多くなってきました。
航空運賃の高騰や円安の影響もあり、海外旅行には二の足を踏む状況はありますが、オランダには航空機を改装した宿泊施設があり、今後会員の皆様が欧州を旅行するときの情報として紹介させていただきます。
オランダ製航空機といえば「フォッカー」ですが、その中でもF-27フレンドシップは日本の空でも60年代から70年代前半にかけてフレンドシップが飛んでいた時期がありました。 当時は、全日空が近距離、離島路線で運用し、また全世界でF-27の最多保有航空会社でもあり、我々日本人としては親しみのある航空機であります。航空機を宿泊施設に改装し、そのユニークさがSNS等でも発信され人気となっている「B&B Friendship」が今晩皆様をご案内する宿です。
自然豊かな国境の村
「B&B Friendship」がある北ブラバント州は、オランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホが生まれ育った場所はベルギーと国境を接し、また自然保護区も多く、歴史が息づく町が点在しています。
この一帯は、オランダでは珍しく海抜もあり、ドゥ・ビースボス国立公園をはじめ、沼沢地、内陸の砂丘や広大な森林が広がる景観が美しい地域でもあり、オランダのサイクリストやハイカーの間では人気のあるエリアとなっています。
一方、農業も盛んであり、特に有機栽培で育った新鮮な野菜や果物、また北海も近く新鮮な魚介類も豊富に水揚げされ、ミシュランの星を獲得したレストランが多い地域としても知られています。
北ブラバント州の自然に魅せられて
このF-27フレンドシップの所有者であるエスター・スロートベッフ(Esther Slootweg)夫人とB&Bの経営者であるゲルハルト・ホルスティンク(Gerhard Horstink)氏は、第二次世界大戦時の激戦地(映画「遠い橋」の舞台)であったヘルダーラント州アーネム(Arnhem)でワインの専門店を経営していました。ご主人のゲルハルトさんはオランダでは数少ないエノロジスト(*)の資格を持っており、もっと広い土地でおいしいワインを提供できる宿泊施設の経営を長年にわたり切望していました。候補地選定では土地が安く手に入り、自然が豊かで豊富な食材があることが条件で、ここホーヘルへイデ(Hoogerheide)の土地に何度も往き着き、2003年からB&Bドマーニ・オート・ブリュレ(Domaine Haute Bruyere)をオープン。
まず、ゲルハルトさんはエノロジスト(*)の資格を活かし、ミシュランの星を獲得したレストランが9軒も点在するこの北ブラバントの地で、ワインの卸元とソムリエの資格を取るための教室を開講。地域発展と若者の流出を防ぐため、若手のソムリエ育成に力を入れ村の活性化に取り組みました。同時に有機栽培でつくられた食材を使った料理を提供することによりオランダ国内、国境を接するベルギーやドイツからの顧客も取り込むことに成功したのです。
(*)エノロジスト:ブドウ栽培から収穫、醸造、瓶詰めに至るまでの全生産工程を指揮し監督するスペシャリストのこと。
転機が舞い込んできた
ゲルハルトさんは大の飛行機好きで、小さい時から空に憧れパイロットになりたかったこともあり、自家用の操縦資格も取得した逸材です。彼は小さい時からF-27が好きで、彼のアイデアでF-27のキャビンを改装して、宿泊施設にしようと計画をしました。すぐに手頃な機体が見つかるはずもないわけですが、この4km先にはウーンスドレヒト(Woensdrecht)飛行場があり、そこにはフォッカー社のメンテンナス施設があり、宿泊に来る顧客からの情報で、元々は90年代にアビオドローム(Aviodrome)航空博物館に展示されていたF-27 PH-FCXが売りに出されていることが分かったのです。計画を立ててから既に12年が過ぎ、13年目に入ろうとした2015年12月30日に購入が決定しました。 それから約2年かけて改修し2017年10月に開業にこぎつけました。
2003年のB&B開設当時から5部屋を運営してきましたが、通常はオランダ国内のお客様の宿泊が90%、そしてベルギーとの国境が近いのでベルギー(アントワープ)のお客様で10%くらいでした。F-27フレンドシップの施設をオープンして丸5年が経過しましたが、美味しいワインと新鮮な地元食材を活用した食事の提供ときめ細かいホスピタリティーも定評となり、オランダ、ベルギー、ドイツ、フランスからのお客様が増えたことです。特に誕生日、結婚記念日、就職、定年などの「記念日」の機会に利用する方の宿泊が増えたことは驚きだったそうです。通常のお部屋よりはF-27の客室は高額なので、この土地の自然の豊かさを知っている方は、平日を通常のお部屋で宿泊(2泊以上)して週末をF-27に宿泊するお客様もいらっしゃるそうです。
2020年3月から新型コロナの感染拡大で6月まで予約を休止しましたが、7月以降は再開し、2022年の予約率は月平均90%を超えていたとのことです。
日本からのお客様
B&B Friendshipを取り囲む周辺には、ゴッホの作品や生涯を探索する楽しみや、ブレダなどの歴史が息づく都市、そして現代デザインの中心都市であるアイントホーフェンなど、北ブラバント州には見所がたくさんあります。 この土地の良さは「楽しいこと好き」のオランダ人が暮らすこの州で、なんと言っても「親しみやすく心地よいひとときを過ごせる場所」であると感じました。
2003年の創業以来、日本人の宿泊者は現状ないそうで、 会員の皆様の中でどなたが「宿泊台帳」に初の日本人として記帳されるのかが楽しみでもあります。
宿泊情報:
B & B Friendship
住所 : Nijverheidstraat 28 4631 KS Hoogerheide
電話 : 0164 61 59 66
ホームページ :https://slapenineenvliegtuig.nl/
F-27宿泊料金 :
①月曜から木曜日の宿泊 €245
②金曜日の宿泊 €275
③土曜日の宿泊 €325
④日曜日の宿泊は土曜日との組み合わせのみ可能であり、€499で予約できます。
**チェックイン 15:00、チェックアウト 12:00
上記宿泊料は、2人様の1泊の料金です。宿泊料金には、朝食、コーヒー、紅茶、ビスケット入りホットチョコレートが含まれる。
また、周辺の自然保護区散策用に自転車2台を無料で利用可能。
夕食は自転車で周辺のレストランに出かけてもよし、またチェックイン時にレセプションで依頼すれば、F-27のお部屋まで本格的なフレンチ料理の配達も可能とのこと。
**通常のお部屋:5室 1泊1部屋 €154から 2泊以上の宿泊から
(上記宿泊料は2023年8月現在にものです。必ずインターネットにて要事前確認)
**交通はアムステルダム市内からは車で1時間半、ベルギーのアントワープ市内からは約40分くらいの距離感です。。
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Fokker F-27 Friendship / PH-FCXの変遷:
1961年7月13日 製造番号807にてフォッカー社によって完成
1961年7月25日 初飛行に成功
1961年8月30日 Türk Hava Yollari (THY-Turkish Airlines) にデリバリー レジストレーション番号:TC-TEK
1972年10月26日 一度フォッカー社へ引き上げられる
1972年12月23日 再びTHYへTC-TEKのレジでリースされ、1973年9月17日まで運用され、その後保管される
1974年4月22日 トルコからフォッカー社スキポール空港の整備地区で保管
1975年1月16日 オランダの登録取得:PH-FCX
1975年1月24日 オランダ海軍転換用機材 (prototype)として利用される
1985年1月8日 航空機として退役し、保管される
1985年までの24年間の総飛行時間は40,013時間であった
1988年5月2日 F-27 Friendship Associationへ寄贈される
1988年5月6日 アヴィオドローム(Aviodrome)スキポール航空博物館似て展示
機首名:Ir. Marius Beeling(**)
** Fokker社のデザイナー/コンストラクターで、1931年、フォッカーD.XVIIのデザインなどを手掛けた人物。
2006年7月18日 個人所有 PS Aero社にて購入
2016年12月30日 B&B Domaine Haute Bruyèreにて購入、現在に至る
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