Aviation Museum Kbely, Prague, Czech Republic

「おとぎの町」とも「世界で一番美しい町」とも称されているチェコ共和国の首都プラハ。

街全体が「世界遺産」に指定され、世界各国から多くの観光客が訪問する魅力的な都市でもある。しかし、歴史を振り返ってみれば他国からの侵略が繰り返され、近代においても1918年以降も四半世紀以上にわたり安定した「国つくり」ができなかったチェコスロバキア共和国時代があった。しかし、一方では第一次世界大戦(1914-1918)、第二次世界大戦(1939-1945)を経て同国の航空機生産への技術は飛躍的に進み、現代では航空機の輸出が国の基幹産業になろうとしている。

今月号では、チェコスロバキア共和国時代に建設されたクベリ(Kbely)空軍基地の一角に立地するクベリ航空博物館を訪問し、第二次世界大戦時にナチスドイツの統治下において、独特な発展過程をしてきたチェコ製航空機にも焦点をあて、読者の皆さんに紹介したい。

**1993年 連邦解消法に基づきチェコ共和国とスロバキア共和国に分離


深い日本との関係

プラハ中央駅から電車と市バスに乗車して30分、市内の北東郊外にあるクベリ航空博物館(英語:Aviation Museum Kbely/チェコ語: Letecké Muzeum Kbely)に到着する。1968年に開館したこの博物館の航空機コレクションは275機と言われ、その内の一部が屋内展示用として85機、野外展示用として25機が年代別に展示されている。また、不定期開催とはなるが、この基地で開催される航空祭において展示飛行されるMiG-15やYak-11を始めとするフライアブルな航空機も保管されている。 

 入口の近くにある資料展示館に足を運ぶと航空、飛行場設備に関わる機器の展示、歴代の軍服などが展示されている。注目したいのは、第一大戦後にここクベリ飛行場から東京へ往復約23,000kmの歴史的な飛行を成し遂げ、それを記念した展示スペースが設けられていることだ。時は金融恐慌が世界を襲った1927年(昭和2年)、チェコスロバキア空軍のスカラ(Jaroslav Skála)中佐とタウフール(Matěj Taufer)整備士の2人がチェコスロバキア製の長距離偵察機LetovŠ-16(レトフ)を駆って同年8月8日にプラハ(ルズィニェ飛行場)から東京へ向かったことはあまり知られていない。彼らはロシアから中国(瀋陽/MUKDEN)、朝鮮半島(平壌-宣川-大邱/DAEGU)を経由し、9月3日に大阪(大阪城東練兵場)へ一度着陸し、その後東京(所沢飛行場)へ飛来した。 日本での滞在は4日間という短い滞在であったが、国を挙げての歓待もあり、当時80歳を迎える東郷平八郎海軍大将から勲章を授与したと記されている。偉業を遂げた資金の捻出先としては、米国のプライベート会社であったVacuum Oil Company(後のMobil Oil)が燃料とオイルの費用を負担し、また、試験飛行という名目でLorraine 450馬力エンジンを搭載したプロトタイプのLetovŠ-16を無償で借受けることができた事により、この東方への遠征飛行に挑むことが可能となった。


自国開発への足掛かり

屋内展示では第一次世界大戦から第二次世界大戦中のチェコスロバキア共和国製の航空機が多数含まれている。同国の航空機産業を発展させ、現在ではトラックや特殊運搬車などを生産しているアヴィア(Avia Auto)社は、ナチスドイツの統治下で軍用機の修繕やエンジンのライセンス生産などを一手に担っていた。

アヴィア社は1919年(大正8年)にシュコダ(Škoda)財閥の子会社として設立され、1920年に初飛行したスポーツプレインアヴィアBH-1(2機生産), 1925年に初飛行した複葉戦闘機BH-21(184機生産),そして1935年に初飛行させた複葉戦闘機B-534(568機生産)などを短い期間の中で製造をしてきた。この技術に目をつけたドイツ空軍はアヴィアに対してメッサーシュミットBf-109G戦闘機のライセンス生産を命じ、米英軍優勢の中で短期間で同機の生産性の向上を目指した。当時DB605エンジンはダイムラー・ベンツ社から運び込まれ、アヴィア社で組み立てられた機体はS-99として戦地へ送られた。 戦後(1945年/昭和20年)もS-99は生産されたが、ドイツの敗戦によりDB605の供給はなくなり、余剰となったハインケルHe111爆撃機に搭載された液冷倒立V型12気筒エンジンユンカース・ユモ(Junkers Jumo)211エンジンとプロペラを代用し、アヴィアS-199として生産を続け、イスラエル軍が購入した初の戦闘機となった。 また、メッサーシュミットMe262のライセンス生産を請け負った経験値より、戦後残された既存パーツを利用し、機体、エンジンとも国産化した同機はS-92として1946年9月27日に初飛行を成功させた。 チェコスロバキア共和国初のジェット戦闘機となったS-92は7機が戦闘機として、3機が練習型のCS-92として1948年にチェコスロバキア空軍へ引き渡された。

その後は、ソビエト連邦(現:ロシア)の貨物・旅客機イリューシンIl-10(B-33)とIl-14(Avia-14)のライセンス生産を取得し、特に42名乗りのAvia-14はチェコスロバキア共和国で生産された最も大型の航空機となった。

もう一社LETクノヴィツェ(LET Kunovice)社は1936年(昭和11年)にシュコダ財閥の一部門として設立し、第二次大戦中はドイツ機の修理工場として航空機生産の技術を磨くことになる。

戦後はソビエト連邦からのライセンス生産でYak-11練習機や多目的機アエロAe-45,Ae-145の生産を担った。その中でも1960年代に自国で開発された19席のターボプロップ機であるL-410ターボジェットは丈夫で故障も少なく、ランニングコストが抑えられる点も高く評価され、実に1,100機以上が生産され、世界のベストセラーの仲間入りを果たした航空機となった。2015年にはグラスコックピットを装備したL-410NGも輸出され、L-410シリーズは現在もその多くがロシヤ、アフリカや北米大陸などで使用されている。


他機種にわたるソ連機の展示

野外展示では比較的大型の航空機が展示されている。そのほとんどがソビエト連邦で生産された戦闘機、輸送機、ヘリコプターである。保存状態は決して良い状態ではないが、ソ連製航空機を一堂に見学できるところは魅力の一つである。

1950年から1992年までのチェコスロバキア空軍では冷戦を通してソビエト連邦製の兵器を主軸に自国産の兵器で不足分を補う体制を構築していた。 その中でも当時ワルシャワ条約機構加盟国用に開発したジェット練習機L-29、その後継者であるL-39などは、操縦性と安定性の良さもあり、西側諸国からも軍用、民間を問わず高い評価がされた航空機であった。広い展示エリアにはMiG-15,-17,-21やスホーイSu-7、輸送ではアヴィア14(Il-14) やAn-240,Tu-104、またヘリコプターではMi-8やMi-24などが展示されている。

撮影しながら見学して一巡するには3時間くらい必要であり、広い敷地内では軽食が取れるカフェテラス、そこに併用してオリジナルグッズを取扱うプロショップなどがある。

プラハ市内からのアクセスも悪くなく、また他機種にわたる旧ソ連時代の航空機の見学はロシアに行かずしても見ごたえがあり、プラハ観光に半日をプラスして、読者の方にも一度は訪れて頂きたい航空博物館である。


訪問のための一般情報


Aviation Museum Kbely (Letecké Muzeum Kbely)

Prague, Czech Republic

住所 : Mladoboleslavská 425/9, 197 00 Kbely,

電話 :+420973207500

Web sight : http://www.vhu.cz


開館 :5月1日―10月31日の火曜―日曜 10:00-18:00 休館日:月曜

入場 :無料

交通 : プラハ中央駅から地下鉄C線 Letňany 下車、バス"185"か"302"に乗ってLetecké Muzeum下車


◽️掲載誌:月刊航空情報 2020年9月号 / せきれい社


General information for visits


Aviation Museum Kbely (Letecké Muzeum Kbely)

Prague, Czech Republic

Address: Mladoboleslavská 425/9, 197 00 Kbely,

Phone: +420973207500

Web sight : http://www.vhu.cz


Open: May 1st-Tuesday-October 31st-Sunday 10: 00-18: 00 Closed: Monday

free entrance

Transportation: From Prague Central Station, take subway line C Letňany, take bus "185" or "302" and get off at Letecké Muzeum


◽️ Published Magazine: Monthly Aireview September 2020 / Sequireysha Ltd.

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