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Aalborg Defense and Garrison Museum, Alborg Denmark

オールボー国防博物館

日本ではあまり馴染みがないデンマーク第4の都市、オールボー。 ユトランド半島北部の歴史的な港町として新鮮な魚介類と味に定評のある地元グルメを求めて欧州各地からの観光客で賑わう町である。この度、オールボー市内の西側に位置するオールボー国防博物館を訪ねる機会があった。この博物館は第二次世界大戦中にドイツ占領軍によって建設された水上飛行機格納庫を再建築し、2002年6月22日に開館した比較的新しい施設である。今月号では、この博物館の歴史と展示されているデンマーク陸軍、空軍で運用された航空機を紹介していく。


ナチスドイツに制圧された制空権

第二次世界大戦中の1940年4月9日、ドイツ軍は国境を越えてデンマークに侵攻し、これによりデンマークでは1945年の解放まで国内における全ての軍事的な航空機能が剥奪され、ドイツ軍のみがデンマーク国内の航空基地を建設・拡張していた。そして3日後の12日にはその勢力はオールボーにまで到達した。 ここオールボーでのドイツ軍の目的は、水上機による海上偵察を通じてデンマーク周辺の北部海域とノルウェー南部地域の連合国の艦隊を監視し、駆逐することであった。 作戦上この水上飛行機基地(Seefliegerhorst Aalborg)は航空機による索敵と攻撃によって連合軍の補給経路を断ち、対潜水艦攻撃 の主要基地としての役割を担う重要な基地となった。大戦中の戦果として特筆すべきは、1942年に2機のドイツ軍のアラドAr-196水上機は英国海軍の地雷設置潜水艦シールをカテガット海峡(ノルウェー沖)で雷撃し、潜行不能とさせ捕獲に成功。航空機が潜水艦を鹵獲する稀有な事例が記録されている。

 

大戦後の急速な近代化

デンマーク軍による航空機の運用は、1911年12月14日に海軍航空隊、そして翌1912年7月2日に陸軍航空隊が編成されたことから始まる。第一次世界大戦中(1914年~1918年)、デンマーク政府は中立政策を維持しながらも、英国製のAvro 504N L.B.Iやライセンス生産でHawker Dankok L.B.IIなどを運用してきた。しかし第二次世界大戦(1939年~1945年)では1939年に不可侵条約を締結したばかりのドイツに国土を占領され、戦後まで軍事的行動の主権は全てドイツ軍によって執行され、デンマークの国章をつけた飛行は認められなかった。

第二次世界大戦後の1948年、デンマーク陸軍航空隊および海軍航空隊は英国製のスピットファイア戦闘機を貸与され、39機の Mk.lXeと、3機の写真偵察用 Mk.XIがデンマーク陸軍と海軍航空隊に配備、1956年まで運用された。

しかし、大戦後は急速なジェット化の時代が到来し、第1世代ジェット戦闘機の代表である英国製グロスター・ミーティア NF.11が先ず導入され、プロペラ機からの転換訓練や操縦技術向上の用途で運用された。その後、整備性、運動性の高い英国製のホーカー・ハンター F. Mk.51やアメリカ製のF-84G サンダージェットへと引き継がれていく。

1960年代になると音速機が主流となる第2世代ジェット戦闘機であるF-104GF-100Fなどアメリカ製の戦闘機が主流となったが、同時に基地攻撃からの回避策として、公道からでも離発着が可能なSTOL(短距離離着陸)性が高く、多目的戦闘機の需要が高まった。これにより1970年よりサーブ 35 ドラケン戦闘機も採用され国防の任に就いた。このドラケンはデンマーク向け輸出型 である35XDが運用され、1970年から1975年にかけて、50機が配備され、1992年まで運用された。

1980年からはF-104GやF-100の後継機として計58機のF-16A、Bが導入され、2002年にはF-16の後継として、F-35A戦闘機の採用が決定され、2021年4月に1号機がロールアウトしたことは記憶に新しい。デンマーク本土に配備される最初のF-35A戦闘機は、2023年に到着する予定で、デンマークの南に位置するスクリュズストロプ空軍基地に配備が予定されている。


索敵・洋上警備に重点

一方、海に囲まれた国土ゆえ、捜索救難・氷の観測などの洋上警備については1947年にコンソリデーテッド PBY-5A(カタリナ)が6機導入され、その後1950年までに計8機を購入し、第721飛行隊で運用し、1957年には改良型のPBY-6Aを8機が導入された。現在は、ウエストランド・リンクスMk.90Bヘリコプターと捜索救難、氷の観測などの洋上警備としてアグスタ・ウエストランドEH101 Mk.512が配備されている。

また大型輸送機については、1973年に導入したC-130H輸送機を更新するため2004年からC-130J輸送機の調達を開始し、現在では、オールボー輸送航空団(Air Transport Wing Aalborg)にC-130JとCL600-2B16が配備されている。


主な展示機の紹介

グロスター・ミーティア(Gloster Meteor) NF.11 イギリスの航空機メーカー、グロスター・エアクラフト社が第二次世界大戦中の1941年よりジェット試作機グロスターE.28/39を進空させ、1943年3月に初飛行に成功した開発した初の実用ジェット戦闘機。しかし上昇力に劣り、加減速が緩慢で姿勢制御が難しく、また戦闘機動は± 2G 程度に制限されていたため、この段階で対戦闘機戦闘は事実上不可能な航空機であった。特に同時代のメッサーシュミットMe262 とは異なり、ミーティアはただ連合国側初のジェット機という存在価値しかなく、高度に発達したレシプロ戦闘機に優る点はなかった。しかし、従来のプロペラ機からの乗員移行が容易だったため、各国空軍が初めて導入するジェット戦闘機として需要が高く、生産累計は約3,900機に達し、フランスベルギーオランダスウェーデンデンマークエジプト、イスラエル、ブラジル、オーストラリアなど13カ国で運用され1954年まで生産された。


ノースアメリカン(North American)F-86D セイバー 全天候要撃機として1949年12月に初飛行し、1951年からアメリカ空軍を始め、イタリア、オランダ、ギリシャ、西ドイツ、ノルウエー、デンマーク、フランス、日本など17カ国で運用され2800機以上が生産された。 大きな特徴は、全天候型レーダーと連動するE-4射撃統制システムを備えた鼻のように飛び出したレドームにある。しかし当時の監視システムの品質の問題や、複雑な構造のゆえに整備製も悪く、パイロットの負担は大きかった。 またD型は機銃を廃止してロケット弾のみを主兵装とした最初の戦闘機でもあり、唯一の兵装である「Mk FFARマイティ・マウス」24連式空対空ロケット弾を装填する引き込み式ロケットパックが装備された。しかし、NATO諸国向け機体(K型)ではロケット弾を廃止して、20mm機関砲4門に変更された。


■リパブリック(Republic) F-84G サンダージェット

1946年2月に初飛行に成功し、1947年からアメリカ空軍で部隊配備が始まった。

第1世代ジェット戦闘機に機体らしく、エアインテイクが機首に配備されたレイアウトであり、直線翼の主翼を採用していた。当時後退翼を備えたF-86セイバーと比較しても高高度の機動性では劣勢ではあったが、速度性能ではほぼ同等であり、ジェット機としては早い段階で空中給油性能が付加され、1950年9月22日には初の空中給油による北大西洋の無着陸横断に成功している。

NATO加盟国を中心に同盟国にも供給され、50年代の航空兵力の位置役を担った機体である。尚、最終型となったF-84Gは約3,000機が生産され、単座戦闘機として初の核弾頭搭載な戦闘爆撃機であった。


■ロッキード(Lockheed)CF-104 スターファイター

1954年2月の初飛行に成功し、マッハ2級のジェット戦闘機としてアメリカ、NATO諸国、ヨルダン、パキスタン、日本など17カ国以上で採用された第2世代ジェット戦闘機に分類される。 機体は細長く、尖った機首に向かって先細りになる胴体内にレーダー、コックピット、機関砲、燃料、着陸装置、およびエンジンが余積なく搭載され、前面投影面積は小さく纏められた。小面積の主翼と相まって、誘導抵抗が非常に高くなる高迎角時を除いて、抗力を非常に低く抑えたものとして、充分な加速力、上昇力と潜在的最高速度を発揮することとなったが、その反面、高翼面荷重

T字尾翼による運動性の低さが指摘された。現代のようなフライ・バイ・ワイヤシステムのなかった時代でもあり、操縦は困難なものであった。一方で、要撃機としては上昇能力に優れ、戦闘爆撃機としては低空侵攻能力に優れているという長所もあり、デンマーク空軍、西ドイツ空軍(当時)、日本の航空自衛隊ではその特性を活かした運用をした。

本誌では全ての展示航空機を紹介することはできないが、北欧の旅行を計画されている方には是非訪れていただきたい航空博物館である。



訪問の時の一般情報:


Aalborg Defense and Garrison Museum

住所  :Skydebanevej 22、9000 Aalborg Denmark

電話  :+45 98 12 88 21

開館日時:3月1日から10月31日まで 10時から16時まで

     ** 7月1日から8月31日までは10時から17時まで開館 (11月1日から2月29日まで休館)

入館料 :大人70DKK ・ 子供(4歳-14歳)35DKK

** DKK(デンマーククローネ)=18円(2021年7月現在)

Web sight :https://forsvarsmuseum.dk/en/front-page-2/ (英語版) 交通:オールボー中央駅バスターミナルから、2番のバスでSkydebanevej v/ Væddeløbsbanen下車、徒歩3分(バス停から300m)


◽️掲載誌:月刊航空情報 11月号/ せきれい社


General information at the time of visit:


Aalborg Defense and Garrison Museum

Address: Skydebanevej 22, 9000 Aalborg Denmark

Telephone: +45 98 12 88 21

Opening date and time: From March 1st to October 31st from 10:00 to 16:00

** Open from 10:00 to 17:00 from July 1st to August 31st (closed from November 1st to February 29th)

Admission fee: Adults 70DKK ・ Children (4-14 years old) 35DKK

** DKK (Danish Krone) = 18 yen (as of July 2021)

E-mail: info@forsvarsmuseum.dk

Web sight: https://forsvarsmuseum.dk/en/front-page-2/ (English version)

Transportation: From Aalborg Central Station Bus Terminal, take bus number 2 to Skydebanevej v / Væddeløbsbanen, 3 minutes walk (300m from bus stop) )


◽️ Published Magazine: Monthly Aireview November issue / Sequireysha Ltd.


 

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