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Stampe & Vertongen Museum, Antwerp、Belgium

ベルギーの首都ブリュッセルの北、オランダとの国境近くに位置する町、アントワープ。旧市街から南に6キロと住宅街の中に立地するアントワープ空港に隣接した、スタンペ&ヴェルトンゲン博物館はアントワープにおける航空のパイオニア、ジャン・スタンペ(1889-1978)とモーリス・ヴェルトンゲン(1886-1964)の功績に敬意を表し1995年に開館した。館内では第一次世界大戦時の航空機が展示され、当時の写真や資料からアントワープの航空史を学ぶことができる。 今月号では、ベルギー製航空機の中で最も多く製造されたSV4航空機にもスポットを当て、その魅力をお伝えする。


パイオニアとなった著者たちの出会い

ジャン・スタンペ(Jean Stampe)は、1889年4月17日、現在のブリュッセル首都圏地域であるモーレンべーク(Molenbeek)で生まれた。彼は20歳で結婚をし、航空整備士として生計を立てるかたわら、実家の居酒屋を手伝っていた。第一世界大戦開戦直前、イタリア旅行中に自動車事故で重傷を負い、そのために軍隊への入隊が遅れた。当時、彼自身は怪我をしていたので兵役につく必要はなかったが、1915年11月にベルギーの陸軍航空隊に志願している。戦後、彼は民間航空免許を取得するために、自費でイギリスのヘンドンへ赴き、ここでモーリス・ヴェルトンゲン(Maurice Vertongen)と出会い、1923年10月にドゥールネ(Deurne/現:アントワープ空港)で飛行学校を開校する。当時スタンプとヴェルトンゲンは、かつての同僚モーリス・ボエル(Maurice Boel)を通じて、ベルギー人の航空機技師アルフレッド・レナール(Alfred Renard/1895-1988)と接触する機会を得る。その後の共同事業の中で、レナールが設計した90馬力から130馬力までの型式RSV(Renard-Stampe-Vertongen)と名付けられた57機におよぶ複葉の練習機RSV.32を製造、その大多数は当時のベルギー陸軍航空隊や飛行クラブで運用された。1927年以降は英国のデ・ハビランド社の代理店となり、「DH.60モス」「DH.80プスモス」を販売に着手したが、アルフレッド・レナールは、独立を希望し会社を辞めることになる。


欧州で認知された航空機の誕生

ロシア革命(1917年-1923年)の影響で多くの航空設計者・技術者が他欧州に亡命したのを好機と捉え、レナールの代わりにロシア人技師ユーリ・ジョージ・イワノフを採用し、1933年に設立した新生スタンペ&ヴェルトンゲン(S&V)社は、RSV.32の改良型であるSV.3(試作)、SV.4、SV.5(ベルギー軍用およびラトビア空軍用)、SV.10といった新型機を設計している。しかし1935年10月5日、スタンペの息子レオンとジョージ・イワノフが、試作機SV.10の試験飛行中の墜落事故で死亡。その後S&V社は再びロシア人技師B・デミドフを雇い、戦闘・偵察など多目的用途で利便性の高いSV.4の改良型であるSV.4Bを開発。当時、第二次世界大戦勃発の暗雲が立ち込める中、ベルギー陸軍航空隊はSV.4Bを30機発注し、フランス軍でも砲撃観測用の航空機の需要が高まり、200機の発注依頼(納入は150機)の記録が残っている。

戦後、ベルギー空軍はパイロット育成の訓練機として活用したD.H.82「タイガーモス」の後継機として、1947年に「エコール・ド・パイロット・エレメンテール」(初等訓練)用にSV.4Bを65機発注した。

S&V社は1970年の会社閉鎖まで、ベルギー空軍や飛行クラブで運用されていたSV.4の整備も行いつつ、フランスで始まったSV.4Bにルノー4Pエンジンを搭載したライセンス生産にも協力。700機におよぶSV.4C、SV.4Aが生産され、またアルジェリアでは、練習機としてさらに150機が製造された。こうしてSV.4は、1000機以上が製造され、ベルギーの航空機の中で最も多く製造された航空機となった。


時代をになった航空機達

この博物館には、スタンペ&ヴェルトンゲン社製の航空機だけでなく、フォッカーD. Vll、アルバトロスD.Va、ソッピース・キャメルなど時代を担い、また映画にも登場する機体が展示されており、その一部を紹介する。

ソッピース キャメル(Sopwith Camel)

複葉戦闘機として英国のソッピース・アビエーションが開発し、第一次世界大戦中はベルギー南部からフランス北東部に渡る西部戦線で使用された。フランス製130馬力のクレルジェ 9B星形エンジンを搭載し最高速度は185km/hに達したが、エンジンのオーバーヒートに悩まされ、また機体の安定感には欠点も多く、操縦が難しい機体であった。

アルバトロスD.Va

第一次世界大戦で活躍したドイツ帝国陸軍アルバトロスD.Va戦闘機は1916年に採用されたアルバトロスDシリーズの最終型であり、水冷6気筒エンジン、木製セミモノコックの胴体、シュパンダウ機銃2丁が要目で、強出力そして強火力な戦闘機であった。 1918年に登場するフォッカーD.VII戦闘機の配備が始まるまで928機が西部戦線に配備されていた。

フォッカーD.VII

フォッカー社のラインホルト・プラッツ技師により開発された高い飛行性能と強力なエンジンを備えた第一次世界大戦時における最強の戦闘機であった。 1918年に初飛行し、その卓越した性能は連合国側からも認められており、フランスでは名機スパッド13のパイロット達からも「フォッカーD.VIIとの空戦は避けよ」との通達が出ていたほどであった。第一次大戦後、ドイツの敗戦に伴い、その休戦条件の一つとして全てのフォッカーD.VIIを連合国に引き渡すことが要求されていたことは、その優秀さを語るエピソードのひとつとしてあまりにも有名である。


市内からのアクセスも良く、例年昇天祭の5月に開催される「Stampe Fly In」…では、日本ではお目にかかれない多くの複葉飛行機や第二次世界大戦で活躍したP-51やスピットファイヤーなどのデモ飛行にも必見の価値がある。


訪問のための一般情報


Stampe & Vertongen Museum

住所:Airportlei zn, B-2100 Antwerp-Deurne

ホームページ:www.stampe.be

e-mail:stampe@skynet.be

開館:土曜日、日曜日のみ

   14:00-17:00

入場料:大人/5ユーロ 子供(12歳以下)/無料(2022年3月現在)

交通機関:

中央駅からは電車でベルケム(Berchem)駅下車、バス番号51、52番似て終点アントワープ空港へ。

空港ターミナルから徒歩3分。


◻️掲載誌:月刊航空情報6月号/セキレイ社


General information for your visit


Stampe & Vertongen Museum

Address:Airportlei zn, B-2100 Antwerp-Deurne

Home Page:www.stampe.be

e-mail: stampe@skynet.be

Open: Saturday and Sunday only 14:00-17:00

Admission: Adults/€5 Children (under 12)/Free (as of March 2022)

Transportation: From the central station, take the train to Berkem.

From the central station, take the train to Berchem station and take bus no. 51 or 52 to the last stop, Antwerp Airport.

3-minute walk from the airport terminal.


◻️Published Magazine: Monthly Aireview、 June issue / Sequirey S.A.



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