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Pearl Harbor Aviation Museum, Ford Island Oahu Hawaii

真珠湾攻撃65周年を記念して2006年12月7日、パールハーバー航空博物館(旧太平洋航空博物館パールハーバー)が開館した。日米開戦により「空の戦場」となった地に設立されたこの航空博物館では、太平洋戦争初期において航空機が果たした役割を、ジオラマをとうして視覚に訴える見事な展示でその歴史を世界中の人に発信している。今月号では、真珠湾攻撃当時から残る格納庫に展示されている貴重な航空機を紹介したい。


航空博物館は軍事施設の中にある パールハーバー航空博物館は、現在も米国の軍事施設であるフォード島内にある。「アメリカの歴史的スポットNo.1」にも選ばれ、パールハーバーの歴史を学ぶことができる航空博物館である。見学するには、まずパールハーバーヒストリックサイト内のビジターセンターでチケットを購入し、フォード島の敷地内を循環している無料のシャトルバスで同航空博物館前まで移動することになる。航空博物館の入り口に当たるハンガー37の前には真珠湾攻撃当時から残る管制塔があり、2022年6月から一般公開(入場料別料金)されている。そして航空機が展示されている格納庫とそれを取り囲む駐機場には、弾痕、爆弾でできた窪みなど、旧日本軍の攻撃の傷跡を今なお保存している。

今回の訪問にあたっては、当航空博物館の航空機修復の一人者であるロッド・ベングストン(Rod Bengston)氏と館内を巡りながら、日本人にとっても所縁のある機体について細かな解説を頂いたことに深く感謝したい。


語り継がれる歴史遺産の数々 ハンガー37 1940年に完成した水上飛行機用の格納庫であり、現在は日米開戦時期(太平洋戦争)に使用された日本と米国の航空機がジオラマ形式で展示されている。日本側の展示としては1941年12月7日、真珠湾攻撃に参加した零戦(A6M)2機が展示。一機目の零戦は、真珠湾攻撃時に被弾、空母への帰投が困難となり止むを得なくニイハウ( Niihau)島に不時着した三菱製零戦21型(尾番号:B11-120)の残骸が当時の墜落現場の様子を再現されたジオラマで展示されている。二機目の零戦は、1968年にソロモン諸島で発見され、テキサス州ダラスに本部を置くCommemorative Air Force(CAF)にて復元された中島製零戦21型が空母飛龍の甲板から発艦する緊迫した様子を見事に再現し展示されている。

今回の訪問で注目したのが、2016年4月18日に公開された旧日本海軍の中島製九七式三号艦上攻撃機(B5N2/Kate)の展示である。この航空機は、太平洋戦争開戦時に世界最新鋭の空母攻撃機であり、大戦中のすべての空母対空母戦と、戦争初期の旧日本軍の水陸両用上陸作戦で重要な役割を果たしてきた航空機である。

同航空博物館はここに展示されているB5Nの歴史について公式にはまだコメントしないが、Pacific Wrecks.com(およびその他のサイト)では、戦後日本軍の手によって飛行した最後のタイプであると報告されている。1945年10月14日、4機のニュージーランド空軍F4Uコルセアに護衛され、ラバウルのバヌカナウ飛行場からパプアニューギニアの東ニューブリテンにあるニュージーランド空軍基地ジャッキーノ湾で正式に降伏させた。 興味深いことに、1997年に出版「Pacific Scrapbook 1943 - 1947」の中で、この編隊のRNZAFコルセアのリードパイロットであるブライアンコックスもその記録を記述している。

ジャッキーノ湾に着陸した機体は連合軍関係者によって写真撮影や検査が行われたが、再び飛行した形跡はなく、ニュージーランド軍の撤退に伴い、数十年間同じ場所に放置され、土産物探しの対象となり80年代(詳細は不明)に地元住民によって解体された。解体された機体は2005年にオーストラリアに輸出された後、ニュージーランド渡り、数年間保管され2012年に同博物館が入手し、今日に至っている。

現在、発動機を「栄一一型」に変更した三号(一二型)がここパールハーバーと英国のウイングスミュージアムで2機のみが収蔵されている貴重な機体であり、この機体を見るだけでも大戦機マニアの方はこの航空博物館を訪問する価値があると感じている。 また、このハンガー37には、米国の航空機も多く展示されている。真珠湾を舞台にした映画に必ず登場するカーチスP-40、そして1942年4月18日、東京大空襲に参加したB-25やミッドウエイ海戦で活躍したドーントレス急降下爆撃機。そしてソロモン諸島ガタルカナルヘンダーソン基地に配備されたF4F3ワイルドキャット戦闘機をジオラマによる再現展示など、映画を通じて見てきた大戦中の航空機を手に触れる距離で見学できることもマニアとして嬉しい限りである。 ハンガー79 真珠湾攻撃でできた弾痕が残る青いガラス窓で紹介される格納庫であり、第二次世界大戦中は、戦闘機、爆撃機、哨戒機がパールハーバーを拠点に、あるいは前線に向かうための整備・エンジン修理施設として利用されていた格納庫である。現在では、歴代のジェット戦闘機やヘリコプターを中心に展示されている。その中でロッド氏が案内をしてくれたのが、アメリカ航空史上、もっとも話題となったボーイングB-17Eフライング・フォートレスである。 ここに展示されているB-17は、1972年にパプアニューギニアのアガイアンボ沼地(Agaiambo Swamp)で発見された機体である。ロッド氏の説明によると、第二次世界大戦中の1942年2月23日、日本占領下のニューブリテン島の船舶を攻撃、基地に帰投のためラバウル上空を飛行中に零戦に迎撃され、機体後部に被弾。燃料系統の一部に被害が及び、燃料切れでパプアニューギニア北岸近くの沼地に強制着陸をせざるを得なくなった機体である。発見後から17年が経過した1989年、トラビス空軍基地ヘリテージセンターが回収を計画。2006年に引き揚げが完了し、2010年2月には、米国の輸入が許可され、同年6月11日にカリフォルニア州ロングビーチで元の乗員の家族を含む一般市民に披露された。その後、本機はツーソンのピマ航空宇宙博物館へ移送され、静態展示での修復が計画されたが、同機はチノ空港のプレーンズ・オブ・フェイム航空博物館に無期限貸与された。 最終的にこの機体は太平洋航空博物館(現:パールハーバー航空博物館)が2013年4月10日に受領し、発見された場所から「スワンプゴースト(沼地の幽霊)」という名前を授かった機体である。 発見当初より、ナショナル・ジオグラフィックをはじめ、これまで多数のメディアに注目された伝説の航空機を、ここハワイで見学できることは、当時の南西太平洋の日米両軍の戦術歴史を知る貴重な航空機であることも付け加えておきたい。ロッド氏によれば、このB-17は完全修復にはせず、当面は歴史を語り継ぐ上でこのまま保存するそうである。


貴重な産業遺産を保護  ハンガー79、そして野外展示では、朝鮮戦争や冷戦期を舞台にした航空機、F-86,F-104やMiG-15を始め、B-52爆撃機(機首部分)、F-4ファントムそしてF-15 イーグル、AH-1 攻撃ヘリコブラ、F-14トムキャットなど、名だたる戦闘機の数々が展示されている。この博物館では、第二次世界大戦から朝鮮戦争、そしてベトナム戦争で使用された航空機の速度や攻撃力の進歩の過程を見事なまでの展示力で表現をしている。  第二次世界大戦から近年に至る50機に及ぶ航空機の展示がほとんどの関心を集める一方、民間航空機も、太平洋の航空史における歴史的節目に寄与している。その 1 つとして、空の旅が贅沢と考えられていた時代に運行していた、かつてのパンアメリカン航空の太平洋横断便に関する詳しい説明や伝説の女性飛行士、アメリア・イアハートのハワイ滞在時の様子を収めた数々に貴重な写真展示もハンガー37に収められている。また、ジョージ H.W. ブッシュ前大統領も操縦した 1942 ステアマン複葉機なども展示されている。 圧倒的な航空機の展示は当然ながら、この博物館の何よりの特徴は、航空史における重要な出来事の人間的側面を伝えることに重きを置いている点である。 実際に真珠湾攻撃を体験した軍関係者の証言のほか、攻撃の様子を映像にしたドキュメンタリーなど多彩な展示が行われている。実機を見て感じ、考え、そして歴史を学べる航空博物館であり、日米の航空機の歴史についても理解を深めて頂ければ嬉しい限りある。

最後になるが、展示機の解説をいただいた、学芸員のロッド・ベングストン氏に改めて感謝したい。 訪問のための一般情報 パールハーバー航空博物館 住所 :Ford Island. 319 Lexington Blvd Honolulu Hawaii,96818 電話 :808-441-4000

開館時間:09:00−17:00 公式サイト: www.PacificAviationMuseum.org/jp 入場料 : 大人$25.99/子供$14.99(航空博物館のみの入場)

     **子供:4歳-12歳

アクセス :ワイキキからザ・バス20・42で「USS戦艦アリゾナ号記念館 (アリゾナメモリアル)」下車USS戦艦アリゾナ記念館で入館券およびシャトルバス乗車券を購入。直通シャトルバスに乗車して、パールハーバー博物館にて降車 入場に関しての注意:米国の基地内への入場であり、リュックサックや鞄等の持ち込みは不可。入り口に前に荷物預かり所(1荷物$6)にて必ず預けること。袋やバッグ類は持って入場は出来ない。カメラ単体は持ち込み可能。


◻️掲載誌:月刊航空情報 2023年1月号/せきれい社


Pearl Harbor Aviation Museum Exhibits

The Pearl Harbor Aviation Museum was founded in 1999 and resides in several historic hangars on Ford Island. The museum opened on December 7th, 2006, and hosts a variety of aviation exhibits including important planes and relics of the War in the Pacific. During the 2020 pandemic shutdown the museum made many upgrades to the exhibits and amenities. Visitors to the museum gain access via a designated public shuttle bus from the Pearl Harbor Visitor Center or in an approved tour vehicle.


Hangar 37

Hangar 37 is a former seaplane hangar that was heavily damaged during the attack in 1941 and was the first hangar developed for the museum. The building encompasses over 7 acres and houses nine aircraft exhibits, a movie theater, a gift shop, a restaurant, and more.

The exhibits in hangar 37 revolve around the WW2 aircraft used during the war in the Pacific and feature the carrier-based Douglas Dauntless dive bomber, the P-40 Warhawk fighter, and the carrier-based Grumman F4F Wildcat fighter. A Japanese Zero that crash-landed after the Pearl Harbor attack on the island of Ni’ihau, east of Kauai, is displayed exactly as it was after the crash.

A 40-foot wide diorama of the Battle of Midway graces an entire wall along with large maps and photographs of WW2 battles and aircraft. Other exhibits include the Boeing Stearman training aircraft used by former President George H.W. Bush for training and the infamous B-24 bomber used throughout the war.


Hangar 79

Hangar 79 is over 87,000 square feet and the building’s glass windows are still riddled with bullet holes from the day of the Japanese attack. It contains exhibits that include the Flying Tigers, MiG Alley with its numerous jets, multiple military attack and transport helicopters, and larger transport aircraft including the partial fuselage and nose of a B-29 Superfortress. A recovered B-17 Heavy Bomber that crash-landed in a marsh near Rabaul in 1942 is also here. It was not successfully recovered until 2006, after 64 years in the marsh, earning the nickname “Swamp Ghost”. It arrived at the museum in 2011 where it was cleaned and reassembled and has become a centerpiece exhibit at Hangar 79.

Just outside hanger 79 stands a lineup of helicopters and seaplanes overshadowed by the bright orange flight tower that has been restored to its former World War II glory.


General information for visits

Pearl Harbor Aviation Museum


Address :Ford Island. 319 Lexington Blvd Honolulu Hawaii,96818

Phone :808-441-4000

Opening hours :09:00-17:00

Official Website :


Admission : Adults $25.99/Children $14.99 (admission to the Aviation Museum only)

      **Children: 4-12 years old

Access: Take The Bus 20 or 42 from Waikiki to USS Arizona Memorial (Arizona Memorial). Board the direct shuttle bus and disembark at the Pearl Harbour Museum.

Entry note: As you are entering a US base, no rucksacks or bags are allowed. They must be deposited at the baggage drop-off ($6 per bag) before the entrance. Bags and sacks are not allowed. Cameras are allowed.


◻Monthly Aireview, January 2023/ Sequirey S.A.



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