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Musée Château de Savigny Lès-Beaune, Côte de Beaune France

フランス東部、パリからTGVに乗車してディジョン(Dijon)経由で約2時間、「ワインの王様」とも呼ばれる銘醸地ブルゴーニュ地方のレ・ボーヌに到着する。 良質なブドウ畑が密集するこの土地に、個人オーナー所有でワイン醸造と乗り物博物館が同じ敷地にある。特に航空機の収集においては、1986年に最初に購入したダッソーミラージュlllから34年の歳月の中で100機を超える個人収集家としてギネスブックにも登録されている。

今日、この博物館には年間4万人を超える入場者が訪れる「驚異の乗り物博物館」としてマスコミにも取り上げられ、ここの展示物を全て見学するには丸2日はかかると言われている。 今月号では、様々なメディアで紹介されているユニークな収集物から、航空機のコレクションに焦点をあて紹介させて頂きたい。


異才のオーナー登場

サヴィニー城(Château de Savigny)の建設は、1340年(日本の「南北朝時代」)に着工され、12ヘクタール(120,000㎡)の広大な土地を当時のブルゴーニュ侯爵であるユード4世が所有した。 1478年にルイ11世により白の一部が破壊されたが、17世紀に再建された。時代は変わり、1979年に現オーナーであるミシェルポン(Michel Pont)によってこの城は買いとられた。 彼自身はブルゴーニュワイン製造のオーナーであるが、実は元フランス空軍のパイロットであり、1960年代にはイタリアアバルト(ABARTH)社のラリードライバーという異才の持ち主である。8年間のレース人生で実に168のトロフィーを手中にし、アバルトを中心に希少価値のある35台のレースカー、300台を超す世界各国から収集したオートバイなどモータースポーツの収集家としてフランスでは第一人者でもあり、彼の全ての収集物はこの城の中で大切に保管されている。


救出された航空機たち

ミシェルポン(Michel Pont)は今年で88歳となり、自身が空軍に従事していた時から用途廃棄になった軍用機のスクラップ化にはある疑問を持っていた。 自分の愛機も古くなれば解体され、「50kgのインゴット」にされてしまう。何か保存する方法はないのであろうか? 車の収集と同じように「後世に伝えていく情熱」が彼の気持ちを動かしたきっかけとなったそうだ。 彼は航空機を収集するために、買付け専門チームを作りフランス国内、ベルギー、スイス、チェコ、ポーランド、ロシアそしてポルトガルなどの解体業者から程度の良い航空機の解体連絡が入ると、その購入にメカニックと一緒に東奔西走し、この城に持ち込んだそうだ。航空機の展示スペースはなだらかな丘陵地に3ヘクタール(30,000㎡)を確保し、購入した順番に規則正しく展示された。 残念ながら野外に展示されている航空機の80%以上は長年の風雨にさらされており、おせいじにも良い状態で保存はされていないが、彼曰く、「多くの航空機はスクラップされる運命であり、この場所に展示されていれば訪問者に喜びを与えることができる」と収集家としてのコメントを発している。


歴史から学ぶフランス軍用機の変遷

展示機は主に1950年から1990年台にかけてのフランス製の戦闘機、偵察機、ヘリコプターが規則正しく並べられており、その中でも希少価値の高い代表的な軍用機を紹介してみたい。

まず彼の収集家として1番機にあたるダッソーミラージュlllは、無尾翼デルタ翼形式を採用し1956年11月17日に初飛行に成功した要撃戦闘機であった。これは本機のみならず、フランスではミラージュ・シリーズを通じて「無尾翼デルタ翼形式」を採用されることが多く、その特徴ともなっている。デルタ翼は複雑な工法を使用せずに後退角を大きく取れるので、遷音速域での空気抵抗が小さく、高速性を発揮するのに有利であった。 また設計上機体の小型・軽量化が容易なこと、翼面積を大きく取れることに加えて高迎え角飛行時でも失速しにくいため、高速域での運動性には定評があった。ミラージュlllの生産機数は1,422機となりフランス空軍他、南アフリカ、ブラジル、イスラエル、アルゼンチンならびにパキスタンでも運用がされた。

次に1947年からダッソー・ブレゲー社により開発が開始されたMD.450 ウーラガン(Ouragan) を紹介する。本機は1948年6月空軍から3機の発注を受け、1949年2月28日に初飛行したフランス初の実用国産ジェット戦闘機であった。 1951年12月から生産が開始され、当時はフランス空軍の主力戦闘機として注目を浴び、約350機が1954年の夏まで生産された。フランス以外ではインド、インドネシア、エルサルバドルそしてイスラエルにも輸出され、それぞれ印パ戦争中東戦争に投入されたが、ミラージュ戦闘機の台頭もあり1980年代に全機が引退している。

また、日本では殆ど馴染みがない、シュッド・ウエスト(Sud West) 社が開発したボートゥール(Vautour) ll は、フランス空軍からの低空爆撃機、全天候迎撃機、近接戦術支援機、偵察機として兼用できる高い要望の中から生まれた航空機であった。ここに展示されている機体はN型であり、機首にレーダーを搭載し、30mm機関砲4門に加えて爆弾庫を転用した兵器庫に68mmロケット弾を116発が携行できた。後に主翼下にR.511空対空ミサイルも装備が可能となり、70機が1979年まで運用された。

最後にダッソーミラージュlVを紹介する。

1956年の勃発した第二次中東戦争(スエズ動乱)時に独自の「核戦力」が必要であると判断したフランスは、その一環として核爆弾とそれを運用する爆撃機の開発を急がせた。ダッソー社が制作した試作機は、ミラージュIIIを複座化して拡大したような機体となり、ほぼ2倍の翼面積、機体重量、複座、双発、3倍の機内燃料を有する機体として1959年6月17日に初飛行を成功させた。翌年1960年9月には1,000kmを時速1,822kmで飛行する当時の世界記録を樹立した。1964年から部隊に配置され運用が開始され、本機の最大速度はマッハ2.2が限界とされており、操縦席は乗員が前後に並んで搭乗するタンデム型となり、機首には給油用のプローブが収納されているため、レーダーは珍しく機首ではなく胴体下部(左右のエアインテークの間)に収められている。2005年6月23の退役までの40年以上に渡り生産された機数は66機であった。

広い展示スペースにはフランス機以外のコレクションもあり、全ての航空機を紹介できないのが残念であるが、9月から10月にかけて訪問すれば、博物館の中にあるカーブで美味しいワインと郷土料理を味わいながらの見学も可能であり、一度は訪問してみたい博物館である。


訪問のための一般情報

Musée Château de Savigny Lès-Beaune

(シャトウサヴィニィボーヌ博物館)

Côte de Beaune, France

住所:21000 Savigny-les-Beaune, Beaune, France

電話:+33 3 80 21 55 03

開館日と時間: 4月15日から10月14日まで:09:00から18:30

         10月15日から4月14日まで:09:00から12:00 14:00から17:30まで

 (閉館:イースター、フランスの祝日、12月25日と1月1日から3週間) **閉演時間の1時間半前まで入場のこと

入場料:大人€12、子供€6

Web sight :https://www.chateau-savigny.com


◽️掲載誌:月刊航空情報 2020年10月号 / せきれい社


General information for visits


Musée Château de Savigny Lès-Beaune

Côte de Beaune, France

Address: 21000 Savigny-les-Beaune, Beaune, France

Phone: +33 3 80 21 55 03

Opening date and time: From April 15th to October 14th: 09:00 to 18:30

From October 15th to April 14th: 09:00 to 12:00 14:00 to 17:30

(Closed: Easter, French holidays, December 25th and January 1st for 3 weeks) ** Admission until one and a half hours before the closing time

Admission: Adults € 12, Children € 6



◽️ Magazine: Monthly Aviation Information October 2020 / Sekireisha

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