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ー 自国の空を守るー 航空博物館から見えてくる技術と防衛思想が築いたスウェーデン『空の100年』

9月22日
読了時間: 4分

日本の1,2倍の国土を有する国でありながら、独自の技術力と防衛思想によって、自国の空を守る航空戦力を築き上げた歴史をより良く知る上で欠かせない航空博物館を巡ってみた。展示されている機体は重複することもあるがそれぞれ異なる「防空の歴史」を伝えていた。


F11 Museum

「スパイ機たちが語る、冷戦の空」


スウェーデン南東部、ニュヒェーピング(Nyköping)のスカブスタ空港に隣接するこの博物館は、スウェーデン空軍の偵察航空と冷戦期の北欧防空を知るうえで、航空機ファンには見逃せない場所だ。1991年、F11航空団創設50周年を記念して開館し、1941~1980年にわたる約40年間の「航空偵察」の歴史を伝えている。             

展示の主役は、サーブ S29Cトゥンナン、S32C ランセン、S35E ドラケン。いずれもスウェーデン航空史を代表する名機だが、ここでは「戦闘機」としてではなく、敵を発見し、撮影し、情報を持ち帰る「偵察機」という視点で見学ができることが興味深い。        なかでも見応え十分なのがS35E ドラケン。1965~1979年にF11で運用された本格的な高速写真偵察機で、マッハ2級の速度を誇り、機体内部に複数の偵察カメラを搭載。高高度から低高度まで、敵地の情報を写真に収めた。F11には36機が配備されたという。        一方、S32C ランセンはレーダーと6基のカメラを備え、海上監視を重視した偵察機だった。また、F11はスウェーデン空軍で唯一スピットファイアを運用した部隊で、1948~1955年に50機を配備。英国製航空機の象徴が、戦後の中立国スウェーデンで偵察任務に就いたことはあまり知られていない。さらに興味深いのが、偵察カメラ、現像設備、写真判読機材、そしてスウェーデン空軍唯一の保存例とされる「移動式情報部隊」までが紹介される。「飛ぶ→撮る→戻る→現像する→判読する」という一連の流れから、偵察航空が冷戦下の安全保障を支えた重要な情報活動であったかが分かる施設である。F11 Museumは、大規模な航空博物館とは違う。しかし「なぜこの飛行機が造られ、何を目的として運用されていたのか」を考えながら館内を巡ると、実に奥深い。


スウェーデン空軍博物館(Flygvapenmuseum)

「空の歴史に刻まれた、スウェーデンの防衛思想」


戦闘機「グリペン」の開発・生産など現在SAAB(サーブ)の主軸機能を果たす町、Linköping(リンショーピン)。この博物館では1926年に独立した軍種として誕生したスウェーデン空軍が、第二次世界大戦、冷戦、そして現代へ、どのように「自国の力で国を守る航空戦力」を築いてきたのかを圧倒的な展示機の数で体感できる場所である。                           

300機を超える航空機・ヘリコプターを収蔵し、約50機を展示。その中心となるのが、サーブが生み出した戦闘機群であるJ 29トゥンナン、J 32ランセン、J 35ドラケン、J 37ビゲンだ。丸みを帯びた胴体が印象的なトゥンナンから、特徴的なダブルデルタ翼を持つドラケン、高速性と短距離離着陸能力を備えたビゲンなど、機体の変化を追うだけでスウェーデン独自の航空技術の進化が見えてくる。          技術の進化が見えてくる。さらに第二次世界大戦以前から戦後に至る展示では、初期のM 1 ニューポール、第二次世界大戦期の米国製P-51Dマスタング、そして世界で唯一現存するユンカースJu86など、航空史上極めて貴重な機体も見逃せない。               見学のポイントは、機体を「珍しい飛行機」として眺めるだけでなく、スウェーデンの安全保障政策と航空技術の関係を意識することだ。中立・非同盟を基本としたスウェーデンは、冷戦期にソ連(現:ロシア)という強大な隣国を意識しながら、国産戦闘機を中心とする強力な航空戦力を構築した。その思想は、現在のNATO加盟後においても、スウェーデンの防衛力を理解する重要な手掛かりとなる。ここは、飛行機の「形」だけでなく、「何を守るために飛んだのか」を考えさせてくれる航空博物館なのである。


Aeroseum(アエロセウム)

「冷戦の地下格納庫に蘇るスウェーデン航空史」


スウェーデン西海岸の都市ヨーテボリ(Göteborg)を訪れる航空機ファンに、ぜひ足を運んでほしい場所がある。それがセーヴェ空港に隣接するアエロセウムだ。最大の展示物そのものが、冷戦の緊張と核兵器の脅威から戦闘機を守るため、山をくり抜いて建設された巨大な「地下格納庫」なのである。                  

地下約27~30m、広さ約2万2,000(サッカー場3面分)の巨大な岩盤式格納庫は1955年に建設され、施設の存在が一般に知られるようになったのは1990年代になってからである。          

館内には50機を超える航空機やヘリコプターを展示。特に注目したいのが、サーブ戦闘機の系譜である。J29トゥンナンをはじめ、J32 ランセン、J35ドラケン、37 ビゲン、JAS39 グリッペンへと続く機体からは、独自の防衛思想に基づき航空戦力を発展させてきたスウェーデンの歩みが見えてくる。なかでも57年間現役を続け、2024年に退役したSK60(サーブ105)は興味深い存在だ。さらに、1940年代製の希少なスウェーデンの戦闘機FFVS J22などビンテージ機の修復現場も見学可能だ。その他、レーダー監視所や防空管制室、基地司令部なども保存され、冷戦期の防空体制を体感できるのもここの特徴である。          アエロセウムでは、スウェーデンが「中立」を掲げながら、本格的な航空防衛力を保持するための国家防衛施設そのものを見ることにあり、そこにはもう一つのスウェーデン「防空の歴史」が刻まれている。


⬜️掲載雑誌:月刊JWINGS 11月号 / イカロス 出版


 
 
 

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